カナダのトルドー首相、2018年の試練は

Prime Minister of Canada Justin Trudeau departs a press availability at the Canadian Embassy in Washington Image copyright Getty Images

カナダのジャスティン・トルドー首相は2017年、ソーシャルメディアの威力を思い知ることとなった。

首相のツイートで今年どれよりあっという間に拡散したのは、カナダは難民を歓迎すると表明した1月のものだった。紛れもなく。

41万8000回リツイートされ、76万8000人が「いいね」を押し、幅広くメディアに取り上げられた。

トルドー首相は「迫害やテロや戦争から逃げている人たちへ、カナダ人は皆さんの信仰を問わず、皆さんを歓迎します。多様性は私たちの力です #カナダへようこそ」とツイートしたのだった。

これは、米国がイスラム教徒が多い7カ国からの難民と移民受け入れを一時停止した直後のものだった。米国の入国制限については、今でも法廷で係争中だ。

確かに、一つのツイートの影響を判断するのは難しい。様々な要素が入り混じる。

しかし、首相のツイートから数カ月の間に、実に何千人もの移民が米国国境を越えてカナダへ不法入国した。11月末までには、1万8615人が亡命を求めカナダに入国した。

野党などからは、首相のツイートのせいで、カナダなら居住権が簡単に得られると誤解されたのではないかという声も上がっている。。

2017年半ばにもなると、トルドー政権は温かい歓迎ムードを抑制するようになった。

カナダは引き続き、移民や難民を歓迎している。確かに。しかし政府関係者たちは、亡命希望者には所定の法律や手続きがあるのだと、明言するようになった。

「亡命を認められるのと、経済移民は別だ」。トルドー氏は8月にこう警告した。

難民申請が山積みになり、政治情勢に影響を与えかねない。米国の動き次第では、また一気に大勢がカナダに押し寄せる可能性もある。任期4年の折り返し地点に向かうトルドー氏は、2018年にこうした課題に取り組むことになる。

亡命を求める人たち

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
「指を全部なくした」 アフリカ難民、零下20度の雪原を歩きカナダへ

カナダへ越境する人の数は9月に減少し、毎月1500~1700人のペースに抑えられている。

非政府組織「カナダ難民評議会 (CCR)」のジャネット・デンチ常任理事は、カナダは難民申請の急増にうまく対応してきたと話す。

「政府があえて難問扱いしなければ、難問に必ずしもならない。残念ながら今のところ政府は、当たり前のことをやっていない」

デンチ氏によると、難民申請は山積みになっている。しかし、難民認定を担当する移民難民委員会 (IRB)と審査部門の処理能力強化のため、必要な予算措置を政府は行っていないというのだ。

「一度審査が滞ってしまうと、処理が難しくなる。申請は受理するが審査は遅れるという状況を作ってしまうと、保護が必要ない人たちも難民申請した方が得だという状況になる。問題は悪循環に陥る」

移民や難民がまた大勢押し寄せれば、政治的な影響もあり得ると、非営利の国立世論調査会社アンガス・リードのシャチ ・カール氏は指摘する。

トルドー首相の1月のツイートは、「必ずしも多くのカナダ人が共感する内容ではない」からだ。

「この問題について、大勢がカナダの理想だと思うことと、大勢のカナダ人の本音には食い違いがあり、衝突するポイントがどこかにある」とカール氏は言う。

頭を悩ます倫理問題

トルドー首相は、厄介な倫理的問題を抱えて2017年を終えた。その一部は自分のせいだった。

カナダの連邦倫理コミッショナーは、宗教指導者アガ・カーン氏が所有する熱帯の島で休暇を取ったトルドー氏が、利益相反の規則に違反したと判断した。トルドー氏は、2016年のクリスマス休暇などで島を訪れていた。

トルドー氏は記者団に対し、今年は代わりにカナディアンロッキーで休暇を取ると話した。

Image copyright Reuters
Image caption カナダのビル・モルノー財務相も2017年後半は問題だらけだった

トルドー内閣のビル・モルノー財務相も、倫理上のトラブルを抱えている。

モルノー財務相は、父親が設立した年金運用会社の株式2000万カナダドル(約18億円)について、「ブラインド・トラスト(白紙委任信託)」 に移さなかったこと、そして年金法案を支持したことで、何週間も批判を浴びた。

また、モルノー氏がフランスに所有する別荘の情報開示も問題になった。

モルノー氏の個人資産をめぐる騒動は、中小企業の税制改革が不首尾に終わったこともあり、さらに悪化した。

アンガス・リード社による12月中旬の世論調査では、トルドー首相の支持率は就任以来初めて、50%を下回った。

トルドー氏の支持率は政治家としては今でも高いが、カール氏は国民の「首相への敬愛は少し減り、少し苛立ちが募っている」と話す。

カール氏は、トルドー政権が難局に直面している理由のほとんどは、「ビル・モルノー問題」だと指摘する。

今年のカナダ政界では、野党の保守党と新民主党がそれぞれ、新しい党首を選んだ。

「この政府は中小企業税制改革をめぐり初めて、野党の組織的な抵抗に見舞われたわけだ」とカール氏は言う。

野党の新党首2人が態勢を整え、もしトルドー氏と閣僚たちが安易に攻撃材料を野党に与え続けるならば、政府にとって20118年も厳しい年になるかもしれない。

貿易問題

米国とカナダ、メキシコが1994年に締結した北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉で刷新しようという前向きな気持ちは、2017年末の時点でははるかかなたに後退していた。

Image copyright Pool/Getty Images

カナダ商工会議所のペリン ・ベイティー会頭は、8月にNAFTA協議が始まった当時より、懸念がかなり募っていると発言した。

10月には、影響力のある米商工会議所が、NAFTA協議に関して「警笛を鳴らすべき」だと話した。

米商工会議所によると米国側は、再交渉を頓挫させかねない「いくつかのポイズン・ピル(毒薬条項)のような提案」を出しているという。

ベイティー会頭は、トルドー政権がNAFTAの利点を米国側の当事者に懸命に説得しようとしていると評価した。

しかしベイティー会頭は、NAFTAの将来は「大統領執務室にいる人がある朝、目を覚まして、何をどう思うかで決まる。交渉を中止するの、交渉を続けるのかは(トランプ氏)次第だ」と言う。

最大の貿易国・米国との経済的関係が不透明になるなか、トルドー政権は新たな貿易相手を見つけようと、アジア太平洋地域と中国に目を向けている。だが、ここでも厳しい交渉が続いている。

NAFTAの首席交渉官らは来年1月、モントリオールで次回会合を開く予定だ。

(英語記事 The tests facing Canada's PM Justin Trudeau in 2018

この話題についてさらに読む