パルミラのベル神殿「破壊」と国連、衛星写真で確認

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パルミラのベル神殿の衛星画像。上が2015年8月27日、下が8月31日。国連訓練調査研究所(UNITAR)測衛星応用計画(UNOSAT)提供。
国連訓練調査研究所(UNITAR)は8月31日、過激派組織「イスラム国」(IS)がシリア中部の古代都市遺跡パルミラでベル神殿を爆破した様子を、衛星写真で確認したと発表した。シリア政府の文化財当局はこれまで部分的な破壊としていたが、国連の衛星写真分析担当はほとんど何も残っていないと明らかにした。
UNITAR観測衛星応用計画(UNOSAT)のアイナール・ビヨルゴ氏はBBCに対して、「入手した画像を見ると残念ながら、神殿の母屋は破壊されてしまったのがわかる」と話した。近くの支柱もいくつか破壊されたという。ベル神殿はパルミラの神々に捧げられたもので、最も保存状態の良い遺構のひとつだった。
シリア文化省文化財博物館総局のマムーン・アブドルカリム総裁はこれに先立つ31日の時点で、ベル神殿で大きな爆発があったが遺構のほとんどは残っていると話していた。しかし実際に遺跡に近づくことは難しく、損傷の程度は確認できずにいた。
Einar Bjorgo from the UN satellite programme says the image confirms the destruction of the temple
<ビデオ>UNITARが公表した、パルミラ・ベル神殿の破壊の様子を示す衛星画像(音声解説なし)

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ベル神殿はパルミラ都市遺跡の中でも最も保存状態の良い、貴重な遺跡だった。写真は2010年8月撮影。

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シリア内戦が始まるまで、年間15万人がパルミラの遺跡を訪れていた。写真は2010年8月撮影。
ISは8月25日には、遺跡の「バール・シャミン神殿」を爆破した様子の画像を公開したばかり。UNOSATは31日、バール・シャミン神殿の被害の程度を示す衛星写真を公表していた。
ISは今年5月にパルミラを制圧。以来、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されている古代遺跡をISが破壊するのではないかと懸念されてきた。ISはこれまでにイラクで複数の古代遺跡を破壊している。

シリア中部にあるタドムールの町、パルミラの遺跡、刑務所、空港などの位置関係

パルミラの古代都市遺跡とは
- ユネスコ世界遺産。
- 古代世界で重要な文化の中心だった都市の遺構が残る。
- 紀元1世紀から2世紀にかけて成立。ギリシャ・ローマ様式に地元の伝統やペルシャの影響が合わさった、文化財や建築が残る。
- 大規模な遺構、1000以上の支柱、500以上の墓所を擁する大がかりな共同墓地などがある。
- シリア内戦の前は毎年15万人以上の観光客がパルミラを訪れていた。

地元で「タドムール」と呼ばれる現在のパルミラの町は、シリアの首都ダマスカスと東部の都市デリゾールをつなぐ道路の、戦略的に重要な場所に位置する。
古代都市パルミラはこの現在のパルミラに近い、砂漠の中にあり、ユネスコなどは古代世界の記録をとどめる世界で最も重要な史跡と位置付けている。

2015年にISが破壊した歴史的遺跡や文化財
1月: イラク北部モスルの中東図書館を襲撃し、数千冊の書籍を焼却。
2月: モスルの中央博物館でメソポタミア文明の石像などを破壊したとするビデオが浮上。
3月: イラクでも最も貴重な遺跡のひとつ、古代アッシリアの遺跡ニムルドを爆発物とブルドーザーで破壊。その後まもなく、ハトラの遺跡も破壊。