アップルが新製品発表、iPadに大型スクリーン

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アップルが9日発表した大型画面の「iPad Pro」と入力用ペン
米IT大手アップルは9日、毎年恒例のイベントで、大画面のiPadや新型アップルTV、タッチ入力の強弱を認識する画面などを発表した。
今回発表されたタブレット端末「iPad Pro」は画面サイズが12.9インチ(32.8センチ)で、短辺の幅が従来品「iPad Air2」の長辺の幅と同じになる。ビジネスユーザーを想定しているほか、ビデオゲームや映画の編集、鑑賞に向くという。
iPhoneの新モデルではタッチ入力の強弱を認識する「3Dタッチ」機能を搭載。アップルは、使い勝手が「劇的に」向上し、アプリから別のアプリに写る時の動作を簡単にした、と説明した。
iPadでは、従来品の販売が減少している。昨年10月から今年6月までのiPad販売台数は前年同期比で19%減少した。
ただ、新モデルによって販売が活性化すると指摘する専門家もいる。コンサルタント会社CCSインサイトのジェフ・ブレイバー氏は、「iPadはいま苦戦しているが、ほかのどのタブレット製品よりもずっと成功しており、数十億ドルの規模を持つ事業だ」と指摘した。
同氏は、「iPhoneの画面大型化で市場を食い合う現象も起きたが、iPadの画面の大型化はこのカテゴリーを活性化するはずだ。しかし価格は多くの人にとってハードルになる」と語った。
アップルによると、新型iPadの情報処理能力は過去半年間で販売されたノートパソコンの8割と同等だという。
「iPad Pro」には、磁石で取り付けるキーボードが正規のアクセサリーとしてオプション提供される。キーボードはマイクロソフトのタッチ画面のパソコン「サーフェス」と類似した作りだ。
さらにペン入力も可能にした。「Apple Pencil」には紙にペンで書く作業をまねるためのセンサーが取り付けられている。
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「iPad Pro」の大型スクリーンは画面分割モードで仕事に使いたいユーザーには朗報となる可能性がある
2010年には、創業者で当時の最高経営責任者(CEO)だったスティーブ・ジョブ氏が「ペンを使うのだったら、失敗だ」と述べており、今回の発表は注目に値する。
アップルによると、「iPad Pro」の電池の持続時間は10時間で、11月に発売される。価格は記憶容量と通信速度によって799ドル(約9万6600円)と1079ドル(約13万500円)の二つに分かれる。入力ペンは99ドル(約1万2000円)、キーボードは169ドル(約2万400円)。
【解説】デイブ・リー北米テクノロジー担当記者
タブレット型端末は素晴らしいが、これまでiPadのアキレス腱は、消費者向けとしては素晴らしいものの、何かきちんとした作業をこなすとか、仕事で使うのは理想的でなかったことだ。
アップルの「iPad Pro」でその問題に取り組んでいる。非常に大きいし、従来のiPad(0.76キログラム)よりも重いが、かさばるというわけではない。
非常に重要なのは入力方法のデバイスだ。
アップルが人々を「ペン」で喜ばせようとしているのを冷笑することもできるが、市場で最も人気のあるタブレットにとって大きな前進だ。
iPadが「仕事に使える」端末になることで、製品として魅力が非常に増し、ノートブックパソコンの市場に食い込むことになるだろう。
BBC's Dave Lee tries out the new iPad Pro and Apple Pencil
<英語ビデオ>BBCのリー記者がiPad Proとペン入力の使い心地を試してみる
アップルTV
アップルのティム・クックCEOは、テレビ用セット・トップ・ボックス(STB)の「アップルTV」でも新製品を発表。新製品は独自のアプリストアと基本ソフト(OS)を持つ。リモコンには、タッチ入力ができる表面と音声認識機能「Siri」が搭載されている。
音声認識機能によって、映画名や番組名、俳優名を言うだけで、幅広いサービスから視聴する候補を探すことができる。
さらにビデオゲームにも使うことができる。
クックCEOは「テレビの将来はアプリにある」と述べた。アップルはアップルTVのことを「ホビー(趣味)」と呼んでいた時期もあった。
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アップルTVの新モデルでは、リモコンを使ってビデオゲームをすることができる
アップルは、インタネットに接続されたスマートテレビを最初に発売したテクノロジー企業の一つだが、アマゾンやロク(Roku)など競合他社がアプリを中心にした機能によってアップル製品を圧倒していた。
クックCEOはアップルTVのアプリストアの開発に数年かかったことを認めた。
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アップルTVのリモコンにはタッチ機能と音声認識機能「Siri」が追加された
エンダース・アナリシスのイアン・モード氏は、「アップルが今まで(アプリストアを)待ったことで機会損失があったとは思わない」と語った。「ウェブ上でしか観られないTVコンテンツが欲しい人は多い。もしアップルが自社製品はほかよりもそれがうまくできると証明できれば、市場シェアを獲得するのは速いだろう」
アップルは、事前に噂されていた、アップルTVでのテレビ番組や映画の配信サービスは発表しなかった。前出のブレイバー氏は、「コンテンツの配信事業にはまだハードルが残っているが、アップルTVの市場での成長で、コンテンツプロバイダーには、(コンテンツ提供に合意する以外に)選択肢はあまりなくなるだろう」と指摘した。
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アップルTVはゲーム専用機のライバルになる可能性がある