移民の「人道的」扱いを――ローマ法王の米議会演説

フランシスコ法王の米上下院合同会議での演説には500人以上の聴衆が耳を傾けた Image copyright Reuters
Image caption フランシスコ法王の米上下院合同会議での演説には500人以上の聴衆が耳を傾けた

訪米中のフランシスコ・ローマ法王は24日、米議会の上下院合同会議で演説し移民を数としてではなく人として考えるべきと訴えた。

フランシスコ法王は「自分がこう扱われたいと思うのと同じ熱意と同情心によって」移民を扱うべきだと述べた。また、従来から主張してきた死刑制度の廃止や、貧困層・障害者の待遇改善をあらためて訴えた。

限られた機会にしか開かれない上下院合同会議に集まった約500人の議員、最高裁判事、政府要人はフランシスコ法王を温かく迎えた。

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"Let us remember the golden rule - do unto others as you would have them do unto you", said the Pope

<英語ビデオ>フランシスコ法王は演説で、「自分にしてほしいと望むことを周りにもせよ」という新約聖書の黄金律を思い出すよう訴えた

割れるような拍手を浴びて議事堂に入った法王は、第2次世界大戦以降なかったような難民危機に世界が直面しているとし、非常に大きな課題だと指摘した。

法王が中央アメリカから米国への移民流入について特に触れた際など、聴衆が立ち上がって拍手する場面がたびたびあった。

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Image caption 米上下院合同会議で演説するフランシスコ法王

法王は「数字の大きさにひるまず、人としてみるべきで、彼らの顔を見て話を聞き、彼らのおかれた状況にできるかぎり最前の対応をするべきだ」と述べた。

米国では長年の間、政治的な対立によって幅広い移民制度改革への期待は裏切られてきた。

オバマ大統領が提示した1100万人の不法移民に在留許可を与える政策は、裁判に持ち込まれ進展していない。

このほかの演説のポイント

・宗教であろうとなかろうと原理主義には注意すべき

・経済的不平等について法王は、先進国であっても不公平な構造や行為が多すぎると述べた

・植民地主義の「激しく暴力的な」行為に直面した南北アメリカの先住民への敬意と評価をあたらめて表明

・「結婚と家族の基盤そのもの」が揺らいでいると指摘し、同性婚への懸念を強く示唆

・旧約聖書の登場人物モーゼを引き合いに、米議会に対し「公正な立法」を通じて団結するよう促す


<解説>キャロライン・ワイアットBBC宗教担当特派員

法王の米国到着前に多くが期待したような、法王を左寄りだとか右寄りだと定義付けることは今回の演説ではできなかった。

演説には民主党、共和党どちらでも耳を傾ける内容があった。死刑制度の廃止は左派が訴えてきたものだし、生命を神聖なものとみなすのは、右派が主張する人工中絶反対への追い風になる。

生命は神聖なものだと法王が述べた際には、共和党員が盛んに拍手をした。共和党は中絶に関連する政府の助成に反対しており、政府機関の閉鎖に発展する可能性もある。

なによりも、フランシスコ法王の訪米は人々を考えさせ、思想的対立を超えた団結や寛容を求めさせ、貧困層、恵まれない人々をいかに助けるか内省する機会となった。

フランシスコ法王はだれもが味方に付けたいと思う人物だが、簡単にレッテルが張れない。政治的エリートだけでなく貧困層やホームレスとも食事を共にした。世界一豊かな国の首都だが、ホームレスがいなくなることはない。

そして、法王が乗っていた小型車は環境問題へのはっきりとした意見表明だ。言葉よりも行為が時に雄弁であることを示す例だろう。


フランシスコ法王はエイブラハム・リンカーン大統領やマーティン・ルーサー・キング牧師の業績に触れ、対立のなかでも理想を示すことができると述べた。演説を「神よアメリカを祝福したまえ(God Bless America)」との言葉で締めくくると、聴衆は立ち上がって長い間拍手を送った。

しかし、2016年の大統領選に出馬を表明した候補の一部からは、法王に異議を唱える声もあった。共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)は死刑制度廃止を訴える法王に同意しないとし、死刑制度は「人命の尊さを認識するものだ」と語った。

フランシスコ法王は25日にニューヨークの国連総会で演説する予定で、米同時多発テロの跡地を訪れるほか、マディソン・スクエア・ガーデンでミサを執り行う予定となっている。