【移民危機】EU、密航業者の取り締まり強化へ――船舶拿捕など開始

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リビア沖でゴムボートに乗った移民の救助に当たったイタリア海軍の駆逐艦「フランチェスコ・ミンベリ」
欧州連合(EU)は地中海南部で活動する移民の密航業者を取り締まる新たな対策を開始する。「ソフィア作戦」と呼ばれる今回の対策では海軍艦船が、密航業者のものとみられる船を乗船検査したり、捜索、拿捕、方向変更を命令したりすることが可能になる。
これまでの対策は、巡回や救助に焦点を置いてきた。今年に入って13万人以上が北アフリカから欧州に渡航しており、溺死者は2700人以上に上る。リビアからイタリアへのルートが最も多くの死者を出すなか、トルコからギリシャを目指す移民が増えている。
大量の移民流入で、EUでは危機感が高まっているものの、加盟国の間では移民対応への意見相違が浮き彫りになっている。
EUが6月に始めた対策では、海軍の監視システムで密航船を探すほか、リビアからイタリアやマルタへの密航の動きを監視してきた。
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「ソフィア作戦」は今年8月に独フリゲート艦上でソマリア人女性が生んだ赤ちゃんの名前にちなんでいる
その第2段階として始まる今回の「ソフィア作戦」の名前は、8月にリビア沿岸で救助された女性がEU艦船の船上で出産した赤ちゃんの名前にちなむものだ。
ソフィア作戦はローマに本部を置き、エンリコ・クレデンディーノ小将が地中海のEU軍艦数隻の指揮を執る。英海軍のフリゲート艦「リッチモンド」も含まれる。
EUのフェデリカ・モゲリーニ外交安全保障上級代表は新たな密航業者対策について9月に入り、「公海上で、乗船検査や捜索、拿捕が可能になる。密航斡旋の容疑者は逮捕されイタリアの司法当局に引き渡される」と述べた。
BBCのローマ特派員、ジェームス・レノルズ記者によると、新対策によって実際に密航が減るかは不明だ。さらに、EUは活動範囲をリビア領海内に拡大したいと考えているものの、これには国連安保理もしくはリビア政府の承認が必要になる。
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クロアチアの海岸警備隊の船から下船し赤十字の臨時施設に集まる移民(イタリア・シチリア、8月16日)
月ごとの地中海の海難事故で死亡した移民の数を昨年と今年で比較した(出典:IOM)