エルサレムで衝突続く 検問強化でも

画像提供, Reuters
イスラエル人女性が刺されたバス停留所内のスーパーを捜索する警官(14日)
イスラエルとパレスチナの衝突が拡大するエルサレムで14日、イスラエル治安当局がアラブ人居住地区への検問や摘発強化を実施した直後にも、暴力事件が相次いだ。
イスラエル警察は14日朝、前の日にイスラエル人3人を殺害した疑いの男性3人が住むとされる東エルサレムのジャバル・ムカバル地区を封鎖。その数時間後には、エルサレム中心部のバス停でイスラエル人女性を刺したパレスチナ人を警官が射殺したと明らかにした。
イスラエル警察によるとそのほか、旧市街近くで警官を刺そうとしたパレスチナ人男性を射殺したという。
イスラエル当局によると、10月初めからこうした襲撃によってイスラエル人7人が殺害され、数十人が撃たれたり刺されたりして負傷している。
一方でパレスチナの保健当局によると、襲撃犯を含む少なくとも30人のパレスチナ人が死亡し、数百人が負傷しているという。
「すべてを燃やしかねない」
パレスチナ自治政府のアッバス議長は14日、暴力事件が激化して以来初めて事態に言及し、イスラエルの行動は「すべてを燃やしかねない宗教対立を引き起こす恐れがある」と警告した。
アッバス氏はさらに、13歳のパレスチナ人少年が12日に15歳少年と共にイスラエル人を刺し、イスラエル警察に撃たれたことを念頭に、イスラエル側が「われわれの子供たちを冷徹に処刑している」と非難した。
これに対して「エルサレム・ポスト」紙によるとイスラエルのネタニヤフ首相はアッバス議長の発言を「うそと扇動だ」と反論し、少年は存命で病院で治療を受けていると指摘したという。
ネタニヤフ首相は13日、新たな警備措置は「人を殺そうとする者、それを手助けしようとする者」を対象にしたものだと述べている。

画像提供, AFP/Getty Images
ベツレヘムで前日死亡したパレスチナ人男性の葬儀後、イスラエル治安部隊と衝突するパレスチナ男性たち(14日)

画像提供, Reuters
ガザ地区でも暴力事件が相次いでいる(14日)
イスラエル政府は13日夜の治安閣議で、エルサレムで「摩擦と扇動の中心」となっている地区を封鎖したり包囲したりする権限を警察に与えた。イスラエル人を襲ったパレスチナ人の自宅は数日内に破壊し、再建は認めず、その家族のエルサレム居住権を取り上げる方針だ。
警察は14日には「東エルサレムにあるパレスチナ人の村や居住地区の出入り口」に検問所を設置したと発表している。
また兵士数百人が配備されたという。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は東エルサレムの一部封鎖は「特定の懸念に限定的に対応するのではなく、すべてのパレスチナ人住民の移動の自由を侵害」することになると批判した。

パレスチナ人によるイスラエル人刺傷事件の発生件数(イスラエル公安庁/9-10月はBBC集計)
14日には西岸ベツレヘムで前日の衝突で死亡したパレスチナ人男性の葬儀が行われた後、イスラエル警察とパレスチナ人が衝突。ガザ地区でも衝突の相次ぐ発生が報告された。
BBCのエルサレム特派員、ヨランデ・ネル記者によると、和平合意の期待が難しい状況下での衝突激化によって、イスラエル人の動揺は高まっており、新たな「インティファーダ」、パレスチナ人の民衆蜂起につながるのではないかと懸念が強まっている。