【米大統領選2016】バイデン副大統領は出馬せず 正式表明

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ホワイトハウスで記者会見したバイデン氏は、今から出馬するのでは時間が足りないと述べた(21日)
来年の米大統領選への出馬がしばらく取りざたされてきたジョー・バイデン米副大統領(72)は21日、出馬しないと正式に表明した。妻のジルさんとオバマ大統領が見守るなか、ホワイトハウスのローズガーデンで会見した。
バイデン氏は、長男ボー氏を今年5月に脳腫瘍で失った経験から家族は立ち直ったものの、今から出馬するにはもう時間が足りないと説明した。3カ月にわたり家族と検討した結果、大統領への3度目の挑戦に家族として取り組める状態にはたどりついたが、時間切れだと判断したという。
その上で副大統領は、民主党がオバマ大統領の業績に背を向けるのは「悲劇的な間違いだ」と力説。自分は候補にはならないが「黙っているつもりはない」と述べ、「(民主党が)党として今どういう状態で、国としてどこへ向かうべきか、はっきりと、強力に主張していくつもりだ」と強調した。
バイデン副大統領は米大統領選に出馬せず
民主党の候補指名争いではヒラリー・クリントン前国務長官が有力視されるなか、強力な対抗馬を求める民主党支持者たちは、バイデン氏の出馬を強く求めていた。
そのクリントン氏が今月半ばの民主党候補討論会で、共和党に敵視されるのを誇りに思うと述べたことを念頭に、バイデン氏はここ数日、共和党を敵視するのは間違っていると繰り返してきたが、この日も「この国を引き裂いている敵対的な党派対立を終わらせなくてはならない」と呼びかけた。
バイデン氏は今年5月に長男ボー氏を病気で失う前にも、1972年には交通事故で最初の妻と1歳の娘を失っている。その後、デラウェア州選出の上院議員を1973年から、上院外交委員会委員長など要職を歴任した。1988年と2008年に大統領選に出馬。08年選挙から撤退後、オバマ氏の副大統領候補となり、09年に就任した。
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会見を終えたバイデン氏とオバマ氏、ジル夫人
<分析>アンソニー・ザーカー、BBC北米担当記者
最終的にことを決めたのは、政治の冷徹な現実だった。バイデン氏が発表で認めたように、大統領選を勝つための選挙戦を今から展開するにはもう時間が足りなかった。
「バイデン出馬」の憶測が最初に浮上したのは今年8月だが、もしその時点で出馬表明していたらもしかしたのだろうか? それは分からないままだ。しかしいつ決断したとしても、厳しい戦いになるのは決まっていた。
ヒラリー・クリントン氏はここ数カ月、確かに苦戦してきたが、それでも手ごわい候補であることに変わりはない。数千万ドルの選挙資金を蓄え、民主党の組織的な支援もあり、2008年にオバマ氏に敗れて以来ずっと今回の選挙に向けて準備を重ねてきたのだ。
ホワイトハウス・ローズガーデンで演説したバイデン氏はオバマ大統領の業績を擁護した。そして、共和党は敵だと先週表明したクリントン氏をあらためて言外に批判した。
バイデン氏は「出馬するかもしれない」という憶測だけで大いに注目される存在で、今後も選挙戦が続くなか自分は引き続き発言していくと述べた。しかし今日のこの演説が実質的な、卒業の答辞だった。
What we'll miss about Joe Biden on the campaign trail
<英語ビデオ>バイデン氏のいない選挙戦はさびしくなる
バイデン氏は出馬しないという発表を受けて、ほかの候補たちは相次いでツイッターでコメントした。
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共和党から出馬している実業家ドナルド・トランプ氏は「ジョー・バイデンは自分と家族のために賢明な選択をしたと思う。個人的にはヒラリー相手に戦う方がありがたい。彼女のこれまでの経歴はひどいものなので」とツイートした。
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民主党から出馬しているクリントン氏は「副大統領は友達で素晴らしい人です。その前向きな姿勢や、世界をより良く変えていこうという献身ぶりに、今も今までも勇気をもらっています」とツイートした。
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民主党から出馬しているバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)は「この国に尽くし続け、中流の人たちを支え続ける副大統領に感謝します」とツイート。サンダース氏はさらに、バイデン氏が提唱する大学無料化や経済格差対策、税制の抜け道廃止などを支持するとツイートした。
同じく民主党から出馬しているマーティン・オマリー前メリーランド州知事はバイデン氏の選択を尊重するとツイートし、「この国が生み出した、最もまっとうで情愛豊かな公職者のひとりだ」と称えた。