米軍などがISから「人質救出で大量処刑阻止」と

ISと戦うイラクのクルド人戦闘員

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ISと戦うイラクのクルド人戦闘員

米国防総省は22日、米軍とクルド人治安部隊がイラク北部のハウィジャで過激派勢力「イスラム国」(IS)の人質となっていた約70人を救出したと発表した。人質らは「処刑寸前」だったという。

22日早朝に実施された救出作戦では米兵1人が負傷し、その後死亡した。米国が昨年ISへの攻撃を開始して以来初めて。米軍に死者が出たことになる。国防総省によると、IS戦闘員5人が捕らえられたほか、多くの戦闘員が殺害されたという。

国防総省によると、救出された約70人にはスンニ派のアラブ人、イラク治安部隊20人、IS内でスパイ容疑で拘束されたメンバーが含まれる。当初クルド人の人質も救出されたとの情報もあったが、国防総省とクルド人自治政府はクルド人は含まれていないとしている。

一方でクルド人組織の情報筋はBBCに対し、救出されたのは17人のみで、すべて元IS戦闘員だと話した。情報筋は今回の作戦の目的が、IS内で命令に逆らって投獄されたメンバーの拿捕だったと話している。

”ブーツ・オン・ザ・グラウンド

ハウィジャはクルド人が多数派であるキルクーク県にある。国防総省によると、救出作戦はクルド人自治政府の要請で行われ、クルド人の特殊部隊が主導し、米軍の地上部隊とヘリコプターが支援した。

国防総省のピーター・クック報道官は、「今回の作戦は詳細にわたって計画されており、人質が大量に処刑されるとの情報を得て実行された」と述べた。さらに、「イラク軍への訓練、助言、援助を行うという、ISIL(IS)に対抗する取り組みの一環として許可された」と語った。

イラクに駐留地上部隊(”ブーツ・オン・ザ・グラウンド”)を置かないというオバマ大統領の約束に背く事例にならないかとの質問を受けたクック報道官は、救出作戦が「特殊な状況」によるもので、戦術に変更はないと説明した。

国防総省のジェフ・デイビス大尉は、大規模な墓が掘られているという「気がかりな情報」を得て、計画は実行されたと述べた。

不可解な作戦?

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イラク北部に展開するクルド人戦闘員

国防総省は否定しているものの、米メディアからは、オバマ大統領の約束が破られたのではないかと疑問視する声が相次いだ。

CNNで国家安全保障分野を担当するジム・シュート記者は「イラク北部まで行って、ISIS(IS)が防御する施設内で交戦することを地上戦と言わないのはどういうことか」とツイートした。

米陸軍特殊部隊に所属していたデイブ・マックスウェル氏は、ワシントンポスト紙の記事で、ISと戦う勢力をどこまで支援できるのか、米国はジレンマに直面していると語った。「どの程度彼らと信頼関係を築くのか、またどの程度彼らの作戦を実際に支援するのか」と述べ、難点を指摘した。

ニュースサイト「デイリー・ビースト」のナンシー・ユセフ記者は、「戦術上の成果と同じくらい対外的にどういうメッセージを発信するかが重要なこの戦争で、また軍事用語の細かい使い分けがもてあそばれている」と今回の作戦を評した