米政府、シリア問題協議にイランを招くと

Iranian men, including members of the Revolutionary Guards, hold portraits during the funeral of Brigadier General Hossein Hamedani in Tehran on 11 October 2015
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イランはシリア派兵を否定するが、軍幹部がシリアで死亡している。写真は、11日にテヘランで行われたイラン革命防衛隊のホセイン・ハメダニ准将の葬儀。

米政府は27日、シリア問題をめぐり週後半からウィーンで始まる各国協議に、イランが初めて招かれると明らかにした。国務省のカービー報道官が会見で述べた。イランが出席するかはまだ分からないという。協議には米露のほかアラブ諸国、欧州諸国の高官級代表が参加する見通し。

カービー報道官は、イランが会議に参加するかどうかは「イラン政府首脳次第」だが、「主要パートナーが協議に参加するのが重要だ」と述べた上で、イランも「主要パートナーになり得るが、まだそうはなっていない」と話した。

シリアのアサド大統領にとって、イランはもっとも近い同盟国だ。イランは過去4年間でアサド政権支援に数十億ドルをつぎこみ、軍事顧問を派遣し、武器を提供し、資金や石油の確保も支えてきた。レバノンのヒズボラが親アサド派勢力応援のためにシリアに派兵したのも、イランの影響があったからとみられている。

イラン政府は、シリアで複数政党が自由に参加する選挙の実施につながる平和的な政権移行を提案してきたが、多国間の和平協議には参加していない。

ロシアもシリア紛争を終結させるには政治的解決しかありえないと主張してきたが、アサド政権を後押しするため9月末から空爆を開始。「テロリスト」しか標的にしていないと説明するが、米国や湾岸地域の米国の同盟国が後押しする反政府勢力の拠点を繰り返し爆撃している。

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自由シリア軍はロシア空爆によって守勢に立たされている。写真は8月のタル・アルザアタル制圧を喜ぶ自由シリア軍兵士たち。

シリア問題の国際協議とは別に、米政府は過激派勢力「イスラム国」への攻撃を強化する用意があると方針を示した。

カーター米国防長官は、イスラム国について米政府などが使う略称「ISIL」を用いて、「ISILに対する時宜をとらえた攻撃を遂行していくにあたって、力のあるパートナーをためらわずに支援していくし、米軍による直接攻撃もやぶさかではない。攻撃は空爆か、地上での直接攻撃かを問わない」と述べた。

<分析>ジェイムズ・ロビンス防衛問題編集委員

米国はかなり姿勢を変えた。シリア協議にイランを歓迎するわけではもちろんないが、米政府はイランの関与を受け入れるというわけだ。

あまりにひどい事態なので、地域の主要国すべての参加が必要だと、米国が認めたことになる。だからといって米国がイラン批判を止めるわけではなく、シリアや中東全体でイランが果たしてきた役割は悪質だという米国の認識に変化はない。

一方のイランもアメリカの関与を同じくらい悪質だとみなしている。米政府は、自分たちはイランを「主要パートナー」と見ていないと、引き続き強調している。

それでも、一部の国や組織しか参加しなかったこれまでの和平協議はどれも頓挫した。しかし今ではロシアと米国がそれぞれ同じシリア上空で空爆作戦を展開するようになった今、両国は巨大なリスクに直面している。それだけに、シリア内戦をなんとか外交で解決しなくてはならないと、事態が切迫してきた。

しかしシリアについて言い争う政府の数を増やすことが、どうやって問題解決につながるのかは見えにくい。対立の要素はイデオロギーや派閥、宗教、地域とあまりに多岐にわたっている。それでも、解決に向けてあらゆる手を尽くさなくてはならない。シリアの苦難は日に日に悪化し、国を逃げ出す人の数や苦しみも募る一方で、国際的な緊張も悪化し続けているからだ。

シリア内戦

なぜシリアで戦っているのか

4年前に反政府運動として始まったものが内戦に発展し、膠着している。アサド政権、IS、さまざまなシリア国内の反政府勢力、クルド人武装組織がいずれもそれぞれに勢力圏を確保している。

誰が誰と戦っているのか

首都ダマスカスおよび国の西部を拠点とする政府軍は、ISやヌスラ戦線といった過激派勢力と戦っている。また、北部や東部に強固な足場をもついわゆる「穏健派」反政府勢力とも戦っている。さらに、政府軍以外の各勢力はそれぞれ互いに敵対している。

人的被害は?

シリア人25万人が殺害され、100万人が負傷している。1100万人以上が住む場所を追われ、そのうち400万人が外国へ避難。危険を冒してでも欧州を目指す人の数が増えている。

世界の反応は?

イラン、ロシア、レバノンのヒズボラはイスラム教アラウィ派が率いるアサド政権を支援する。一方でトルコ、サウジアラビア、カタール、および米英仏は、より穏健なスンニ派が多数を反政府勢力を支持。ヒズボラとイランは地上部隊や将校を派遣しているとされる。アメリカなど欧米主導の連合国とロシアが空爆を実施している。