豪クリスマス島の移民施設で「騒乱」 警備員退避

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クリスマス島の移民収容施設(2013年7月撮影)
オーストラリア移民局は9日、豪連邦領クリスマス島の移民収容施設で「大規模な騒乱」があり、警備員たちを「安全上の理由」から退避させたと文書で発表した。医療、教育、スポーツ用の設備が損傷を受けたという。
移民局は「大規模な暴動」が起きているという報道は否定したが、状況は「緊迫している」と認めた。
「収容されていた移民1人が8日に脱走し、施設の外で死亡した。これを受けて少数のイラン人収容者が平和的抗議に参加したことが、騒乱のきっかけとなった。平和的抗議は認められるが、ほかの収容者たちがこれに乗じて設備を破壊し、騒ぎを起こした」と移民局は声明で説明している。
政府はさらに「ビザ停止の要件にもとづきビザを停止された市民権をもたない収容者たちが、引き続き騒ぎを起こし、施設を損壊していると思われる」と補足。「現時点では収容者や職員が負傷したという報告はない」とも述べている。
移民収容施設は「SERCO」という民間会社が運営している。
収容者死亡から「暴動」に
複数報道によると、7日に施設を逃れたクルド系イラン人ファゼル・チェゲニさんが死亡した原因について、他の収容者が疑問を持ち始めたことから、騒ぎが始まった。
移民局の声明によると、チェゲニさんの遺体は8日、崖の下で発見された。当局は死体検案書を取りまとめているところだという。
移民問題に取り組む人権団体「Refugee Action Coalition」のイアン・リントウルさんは豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドに対して、「ほかの収容者と同じように、恣意的な長期間の拘束生活にファゼルは苦しんでいた」、「もうこれ以上がまんできない、『外に出たい』と他の収容者に話していた」と説明した。
「あちこちに火を」
によると、収容されている25歳のマテジ・クペルカさんは身の危険を感じていると言い、「あちこちに火をつけている。食堂に侵入した」と状況を語った。「車に警備員が大勢乗って施設内を巡回しているが、窓の中をのぞくだけで、誰も助けてくれない」。
オーストラリア緑の党のサラ・ハンソン=ヤング上院議員は、クリスマス島の施設は「メルトダウン」状態にあると事態の危険性を強調する。
「施設に閉じ込められている人たちと話したが、不安が広がりあちこちで火の手が上がっているそうだ」
議員はさらに「SERCO社の警備員が全員、8日夜遅くに退避した今、収容者たちは放置されている」と説明し、亡命を求める人たちがほかの収容者と一緒に閉じ込められているのは危険だと懸念を示した。
「クリスマス島は一触即発の状態にあると繰り返し警告されてきたのに、残念ながら政府はこれを無視してきた」
クリスマス島の位置
賛否両論の移民政策
クリスマス島は豪パースから北西2650キロ、インドネシア・ジャワ島から南380キロにある。オーストラリア政府は亡命希望者をこの島をはじめ、パプアニューギニアのマヌス島やナウルの施設に収容している。
クリスマス島の施設には、ニュージーランドから強制退去させられた人たちも収容されている。豪政府が犯罪歴のある人たちへのビザ発行を中止して以来、ニュージーランドから施設に収容される人数は増えつつある。
豪政府は、亡命希望者たちの渡航は犯罪組織が運営する危険なもので、その流れを食い止める義務が政府としてあると主張する。しかし政府の対策を批判する人たちは、亡命者の受け入れ反対は人種差別が理由のことが多く、この政策はオーストラリアの評価を傷つけていると政策変更を求める。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の豪代表は今年7月、政府の対策を「とんでもない大失態」と批判。同団体はパプアニューギニアのマヌス収容所についても懸念の声をあげている。
マヌス収容所では今年2月に暴動が発生し、イラン人男性が殺害された。殺人罪で救世軍職員と警備員が訴追されており、審理は今月末に再開される。