豪クリスマス島の移民施設「騒乱」、沈静化と

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クリスマス島の移民収容施設(2013年7月撮影)
豪連邦領クリスマス島の移民収容施設で「大規模な騒乱」があり、警備員たちが退避した問題で、オーストラリア移民局は10日、収容者と警察のにらみ合いは終わったと明らかにした。移民局は、収容者たちとの交渉の後、施設全てが移民局の管理下に戻ったと説明している。
移民局は9日、「収容されていた移民1人が8日に脱走し、施設の外で死亡した。これを受けて少数のイラン人収容者が平和的抗議に参加したことが、騒乱のきっかけとなった。平和的抗議は認められるが、ほかの収容者たちがこれに乗じて設備を破壊し、騒ぎを起こした」と声明で説明していた。
収容者たちは施設内で火をもやし、武器を持って立てこもったという。
当局によると収容者5人がけがをしたり体調不良を訴えたりしているが、生命への危険はない。「騒乱」が続いた3日間で負ったものか、警察が施設内に入ってから受けたものかは不明だ。
「犯罪者の集団」
警察は10日早朝に、施設に警官を増派した。一部の強硬派が警備員たちに反抗し、部屋に戻るのを拒否していたという。
「バリケードを作って立てこもり、事態を落ち着かせようとするこちらの努力に対して、武器を使うと脅すなど積極的に抵抗していた一部の強硬派には、一定の強制力を行使した」と移民局は説明し、施設の共有スペースの一部が激しい損傷を受けていると指摘した。
ダットン移民相は、「中心になった犯罪者の集団」が騒ぎの原因だと非難した。
「一部の犯罪者が何かをしたからと、政府は震え上がったりしない。その点については明確に述べてきた」
豪州領クリスマス島の移民施設で騒動 渦中の収容者に電話取材
収容者死亡から「暴動」に
複数報道によると、7日に施設を逃れたクルド系イラン人ファゼル・チェゲニさんが死亡した原因について、他の収容者が疑問を持ち始めたことから、騒ぎが始まった。
移民局の声明によると、チェゲニさんの遺体は8日、崖の下で発見された。当局は死体検案書を取りまとめているところだという。
ダットン移民相は議会に、「疑わしい状況はないと聞いている」と報告した。
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クリスマス島で死亡したクルド系イラン人難民のファゼル・チェゲニさん
クリスマス島の位置
クリスマス島の収容所
- クリスマス島ノースウェストポイントにある現在の収容所は2006年に開所。
- 政府は運営を民間会社「SERCO」に外注。
- 収容者203人は全員男性。約40人はオーストラリアで犯罪を犯しビザを取り上げられ、強制退去を待つニュージーランド人。
- オーストラリア人権委のジリアン・トリッグス委員長は2014年7月に島を訪問した後、亡命希望者の状況に「深刻な懸念」を表明した。
- 収容されていた子供は2014年12月までに全員、別の施設に移送された
賛否両論の移民政策
クリスマス島は豪パースから北西2650キロ、インドネシア・ジャワ島から南380キロにある。オーストラリア政府は船でやってくる亡命希望者をこの島をはじめ、パプアニューギニアのマヌス島やナウルの施設に収容している。またオーストラリアから強制退去処分を受けたニュージーランド人も収容している。
移民収容施設は「SERCO」という民間会社が運営している。
クリスマス島でのマスコミ取材はほとんど禁止されているため、島で起きることについて情報を客観的に検証することは困難な状態にある。
2015年6月30日の時点で豪移民施設にいる人たちの収容期間。730日以上収容されている人が800人以上いる。
豪政府は、亡命希望者たちの渡航は犯罪組織が運営する危険なもので、その流れを食い止める義務が政府としてあると主張する。しかし政府の対策を批判する人たちは、亡命者の受け入れ反対は人種差別が理由のことが多く、この政策はオーストラリアの評価を傷つけていると政策変更を求める。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の豪代表は今年7月、政府の対策を「とんでもない大失態」と批判。同団体はパプアニューギニアのマヌス収容所についても懸念の声を上げている。
マヌス収容所では今年2月に暴動が発生し、イラン人男性が殺害された。殺人罪で救世軍職員と警備員が訴追されており、審理は今月末に再開される。
オーストラリアの「オフショア」移民政策は、国連でも繰り返し批判の対象となっている。米英などは国連を通じてオーストラリアに、亡命希望者たちの船を追い返すのを止め、島々の施設を閉鎖するよう繰り返し求めている。

豪クリスマス島の移民施設で「騒乱」 警備員退避
オーストラリア移民局は9日、豪連邦領クリスマス島の移民収容施設で「大規模な騒乱」があり、警備員たちを「安全上の理由」から退避させたと文書で発表した。医療、教育、スポーツ用の設備が損傷を受けたという。