中国「独身の日」商戦でアリババが1日で1兆7000億円の売り上げ

画像提供, Getty Images
中国では「11月11日」は「独身の日」。「1」が並ぶ日付を独身者が並ぶ様子に見立てて、未婚者が自分のために買い物をする日として定着している。今年の「独身の日」商戦では、ネット通販最大手のアリババ集団が1日で売上912億元(約1兆7000億円)を達成。昨年の記録の60%増を記録した。
アリババ集団によると、最初の1時間の売り上げは39億ドル(約4800億円)で昨年の倍近いペースだった。24時間で終わる特売の開始から10時間で、売り上げは78億6000万ドルに達し、昨年の93億ドルの記録を上回る勢いという。
一方でアメリカのネット特売の日は11月9日で、アナリストのコムスコアによると、売り上げは13億5000万ドルだったという
<分析>BBCニュース、シリア・ハットン記者(北京)
中国の「独身の日」商戦がこれほど盛り上がるのは、資本主義的な祝日への興奮を反映しているからだ。
「別々のコートが2着欲しかったのに、セールが始まって3分でどっちも売切れちゃった!」と、若い女性はオンラインで嘆いた。
別の女性は「一晩で2000元(約3万8000円)も使っちゃった! お金ない! おなかがすいたら泥を食べなきゃ」と悲鳴のような書き込みをした。
しかしセールでお金が飛び交っているとはいえ、中国経済が回復基調にあると判断するのは早計だ。
経済への根強い懸念は、新しい統計データに裏打ちされている。インフレ率は下がり、食料品を除く物価は10月に0.3%低下した。つまり中国では消費が減速し続けているという証拠で、この長期傾向は「独身の日」で改善されるものではない。
中国の購買力を世界に
「独身の日」はアリババ集団が2009年に打ち出して以来、急成長してきた。今ではライバル社のJD.comなど複数の小売業者が参加している。
アリババ集団によると今年は同社サイト上で25カ国から4万の業者と3万のブランドが特売に参加。同社の通販アプリ「淘宝網(タオバオ)」の利用者は1億3000万人に達しているという。
競合他社も積極的に特売商品を提供しているが、ほとんどの消費者はアリババの「天猫(Tモール)」を主に利用していると、市場調査企業「ユーロモニター・インターナショナル」のファンティン・スンさんは言う。
「商品の選択肢が豊富で価格の競争力が優れているというだけでなく、有名スターを大勢招いたガラ・イベントなど強力なマーケティング・キャンペーンを展開している」ことが、アリババの強みだとスンさんは言う。
アリババの張勇(ダニエル・チャン)最高経営責任者(CEO)は、24時間の特売マラソンの間に主に携帯端末の利用者を対象に、「1時間ごとにサプライズを用意する」と期待感を盛り上げていた。
張氏はさらに「全世界がこの11月11日、中国の購買力を目の当たりにする」と声明を発表していた。
画像提供, @Alizila
アリババ集団は、最初の1時間で取扱高が40億ドルに達したとツイート
同社は、特売開始から最初の1時間で2700万件の注文は携帯端末からのものだったと発表した。
市場調査会社IDCの中国担当キティ・フォクさんは、中国の消費者のほとんどはネット通販を好むようになったと話す。
「中国にはスマートフォン利用者が10億人近くいる大きい市場だ。アリババにとっても競合各社にとっても朗報だ」
特売開始に向けてアリババは、4時間のテレビ特番を放送。番組には中国のスターのほか、ジェイムズ・ボンドを演じる英俳優ダニエル・クレイグや、人気ドラマ「ハウス・オブ・カード」に主演する米俳優ケビン・スペイシーなど欧米のスターも登場した。
ケビン・スぺイシーは2分間のビデオで、ドラマの役柄を演じながら、中国の買い物客に「独身の日のおめでとう」とあいさつしていた。
大な規模
アリババは中国のネット通販市場の80%以上を占める。
画像提供, Getty Images
同社は中国経済の失速にも関わらず、電化製品から化粧品に至る多様な商品を、170万人の配達人が配達車両40万台と貨物機200機で届けて回るだろうと予測する。
世界第2位の経済大国が四半世紀で最も低い成長率に差し掛かるなか、エコノミストたちは「独身の日」特売での消費行動から国の消費性向について様々な手がかりを見つけようとするだろう。
ユーロモニターのスン氏は、特売イベントは国内消費だけでなく外国との貿易も刺激すると指摘する。
「外国の小売企業をもっと中国市場に引き寄せると同時に、国内小売企業の海外展開を推進しようというのが、アリババの狙いだ」