米各州でシリア難民受け入れ停止 パリ襲撃受け

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Many US states say they will no longer welcome Syrian refugees

<英語ビデオ>米国で難民受け入れをめぐる政治論争が沸き起こっている

米国の各州でシリア難民の受け入れを停止する動きが広がっている。パリの連続襲撃事件を受けたもので、治安への懸念が背景となっている。

ミシガン州のリック・スナイダー知事は、連邦政府の国土安全保障省が「安全検査体制の全面的な見直しを完了するまで」新たな難民の受け入れを一時停止すると述べた。同州では、過去1年で約200人のシリア難民が定住したとされる。

このほか、アラバマ州、テキサス州などが同様の発表をしているが、米国務省の報道官は、法的な根拠があるかは不明だと語った。

オバマ大統領は、シリア内戦を逃れてきた人々を助けるために米国が「責務を果たす」よう求めている。同大統領は、「彼らの目の前でドアを閉めるのは我々自身の価値観を裏切ることになる」と述べた。また、「各国が安全を必死に求める難民を迎え入れるのと、自分たちの安全を確保することは両立可能であり、責務だ」と語った。

連続襲撃事件で死亡した7人のうち1人は、移民に紛れてギリシャに入国したシリア人だとみられている。

一方、シリアからの難民は数百万人に上っており、米国は今後1年間で約1万人の受け入れを表明している。

受け入れを拒否している州

アラバマ、アリゾナ、アーカンソー、フロリダ、ジョージア、イリノイ、インディアナ、アイオワ、ルイジアナ、マサチューセッツ、ミシガン、ミシシッピ、ニューハンプシャー、ノースカロライナ、オハイオ、テキサス、ウィスコンシン

アラバマ州ではシリア難民を受けれた前例がないが、同州のロバート・ベントレー知事は「アラバマ州民を攻撃の危険性に少しでもさらすようなことはしない」と語った。

現場から BBCニュース、スザーン・キアンプア記者(ワシントン)

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国務省の法律専門家たちはシリア移民の受け入れを州知事が拒否できる法的根拠があるのか調べているところだ。

まだ結論は出ていないが、実際には難民は拒否できないとみている。ただ、難民を支援するNGO(非政府組織)の活動をやりにくくすることは可能だ。州政府がNGOへの協力を拒否すれば、NGOは別の州をあたるだろう。

しかし、安全検査体制への懸念や、パリの事件のようなことが米国でも起きるのでないかという心配も高まっている。連邦議会の議員の間では特にそうだ。

難民支援団体の関係者からは州知事たちの発表に対する怒りの声が上がっている。キリスト教ルーテル派の難民支援団体で活動するマイケル・ミッチェル氏は「難民たちは迫害を逃れてきたことを忘れるべきではない」と語った。

一方で、共和党から来年の大統領選挙に出馬表明した候補には、これ以上の難民受け入れは間違っていると語る候補もいる。実業家ドナルド・トランプ氏は、受け入れは「正気とは思えない」と述べた。

民主党からの立候補者のうち支持率が最も高い3候補は、米国がすでに表明している受け入れ数を約1万人からさらに増やすべきとの考えを示している。

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米国の大学生ゴンザレスさんは襲撃の犠牲となった

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Syrian refugee in America: "We are here because of war"

<英語ビデオ>ケンタッキー州に移住したシリア人のモハメドさんは「ここに来たのは食べ物がなかったからではない、戦争のせいで来たんだ」と話す