パリでCOP21開幕へ――後発国は性急な合意に懸念
- マット・マグラス
- BBCニュース、環境問題編集委員

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COP21開催を歓迎するライトアップがパリのエッフェル塔を彩った(29日)
地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)がパリで30日に開幕する。
参加195カ国は、今後2週間にわたって開かれる会議で、新たな枠組みに合意することを目指している。
会議の初日は、147カ国の首脳による演説が終日予定されている。
しかし、後発発展途上国は、各国が合意を目指し協議するなかで「見捨てられる」のではないかと懸念している。
会議の開幕に伴いフランスが新たな議長国となる。
各国首脳らが到着するなか、パリ郊外のブルジェにある会場周辺の道路は警察によって閉鎖され、厳戒態勢が敷かれている。
合意は可能という明るい見通しが広がるなかで、各国の大統領、首相らの演説が行われることになる。
パリ慰霊碑の隣で衝突も COP21開幕
フランスのローラン・ファビウス外相は、週末に開かれた記者会見で会議について「世界にとって必要な転換点になるだろう」と述べた。同外相は会議の議長を務める。
太陽光発電にとって朗報
会議初日にのみ出席する各国首脳は、気温上昇の抑制に向けたさまざまな取り組みを相次いで発表する予定だ。
フランスとインドは、太陽光が豊富な熱帯地域の100カ国と太陽光発電を推進する世界的な協力関係について発表する。
このほか再生可能エネルギーの研究開発への資金提供についても発表が予定されている。
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インドは世界的な太陽光発電の推進を目指す(写真はニューデリーの市場、今年10月)
しかし、美辞麗句と善意があふれる雰囲気のなかでも、後発発展途上国(LDC)は、各国が新たな枠組みの合意を急ぐあまり、LDC各国の利害が損なわれるのではないかと懸念している。
焦点となっているのは気温上昇を2度に抑えるという目標だ。現在180カ国以上が提出した各国の計画がすべて実施された場合でも、気温上昇は3度近くになると推計されている。
ただしLDC48カ国は、気温上昇が1.5度以下に抑えられない限り、破滅的な結果になると警鐘を鳴らす。
LDC議長国であるアンゴラのギザ・ギャスパー・マーティンズ氏は「LDC各国にとっては、気温上昇抑制の目標が2度に留まれば、経済開発や食糧安全保障、エコシステム、さらには人々の生活や命が脅かされることになる」と語る。
マーティンズ氏は、「集まった首脳たちは会議の方向性に決定的な影響を及ぼす。最も危険にさらされている人々を見捨てないように、野心的で力強く実効性のある合意を目指すよう、あらためて訴える」と述べた。
各国の首脳が出席していることは会議にとって大きな追い風ではあるが、実務的な交渉の難しさを軽減するものではない。
途上国の「差別化」
現時点で準備された、文字がぎっしり詰まった50ページに及ぶ合意草案には、括弧に入った部分が多数あり、まだ合意されていないものが多いことを示唆している。
未解決の問題があまりに多いことを念頭に置きつつ、実務者間の交渉はすでに29日に始まっている。
関係者らは今週末までに新たな草案を作成し、翌週の環境担当相の間で行われる交渉に間に合わせることを目指している。
大きな論争の的のひとつに先進国と発展途上国の「差別化」がある。
米国など富裕国は、気候変動枠組み条約が成立した1992年時点での経済発展の度合によって、先進国と途上国との線引きがされていることに異論を唱えている。
米国などは現時点での発展度合が正確に反映されるべきと主張。これによって温暖化ガスの排出抑制義務を負う国が増えることになる。