COP21、パリ協定を採択 温暖化対策で世界合意

ファビウス議長が「パリ協定」の採択を宣言した瞬間
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ファビウス議長が「パリ協定」の採択を宣言した瞬間

パリ開催の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日夕(日本時間13日未明)、2週間の交渉の末、世界の気温上昇を2度未満に抑えるための取り組みに合意し、パリ協定を採択した。世界196カ国の国・地域がすべて、温室効果ガス削減を約束するのは初めて。2020年以降の温暖化対策の法的枠組みとなる協定の一部には法的拘束力があり、一部は自主的な行動目標となる。

採択に先立ち、合意成立の鍵を握っていた途上国77カ国のグループをはじめ、中国やインドも提案支持を表明していた。

議長国フランスのローラン・ファビウス外相は12日夕の閣僚級会合で、「COPが『パリ協定』と題した合意内容を採択するよう呼びかけます」と述べ、「好意的な反応が見えます。反対意見は見当たりません。パリ協定は採択されました」と宣言した。

決定の木槌(きづち)を振り下ろすと、各国代表は拍手しながら立ち上がり歓声を上げた。

200近い国・地域すべてが参加する初の温室効果ガス削減の取り決めは、2020年から実施される。途上国グループの代表は歴史的な合意だと評価し、「我々は前例のない時代に生きている。前例のない対応が必要だ。後発開発途上国(LDC)にとってだけでなく、世界の市民全員にとって」と付け足した。

オバマ米大統領も、協定は「完璧ではない」ものの「意欲的」で「歴史的」だと評価。「世界が結束すればどれだけのことができるか示した」、「自分たちにはこの惑星しかない。それを救うための絶好の機会だった」と意義を強調した。

合意の要旨

• 温室効果ガス排出量が速やかにピークに達して減り始めるようにする。今世紀後半には温室効果ガスの排出源と吸収源の均衡達成。森林・土壌・海洋が自然に吸収できる量にまで、排出量を2050~2100年の間に減らしていく。

• 地球の気温上昇を2度より「かなり低く」抑え、1.5度未満に抑えるための取り組みを推進する。

• 5年ごとに進展を点検。

• 途上国の気候変動対策に先進国が2020年まで年間1000億ドル支援。2020年以降も資金援助の約束。

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The announcement was greeted by cheers and excitement in the hall

<英語ビデオ> 「パリ協定」採択に拍手と歓声

<分析> マット・マグラス、BBCニュース、パリ

パリ協定の採択にあたって演説も決まり文句も、上質のシャンパンのようになめらかだった。そこにいた大勢が、無事な出産を祝う父親のようなものだったのだし! ここでは何より安堵の思いが強い。ローラン・ファビウスCOP議長の影響は非常に重要だった。外交官としての長年の経験に裏打ちされたファビウス氏の説得力は、この場では比肩しがたいものだった。そうした自分の影響力を、議長は上手に使っていた。

ファビウス氏の采配のもとで採択されたパリ協定は、気候変動対策という意味でも環境保護という意味でも、類を見ない。この惑星の気温上昇の上限を、長期にわたり明示し、かつその実現方法をも明示している。途上国の対応を可能にする資金も提供されるし、より意欲的な取り組みを促す強力なレビューの仕組みもある。温度上昇を2度よりかなり低く抑えるという目的を達成するには、これが鍵となる。

何よりも今回の協定は、いかに地球に負担をかけずに世界が発展するかという新しい方法を指し示している。持続可能性をいかに長期的に実現するかという視点こそが、今回の協定の核心だ。それが実現できれば、それこそ世界を変える取り決めとなる。

協定採択に向けて、全体会合の再開を待つために集まった各国代表団の空気は明るく前向きで、ファビウス議長の入場を拍手で向けた。

これに先駆けてフランソワ・オランド仏大統領は、提案内容は前例のない意欲的なものだと評価し、国連の潘基文事務総長は各国の交渉担当に「役目を果たす」よう呼びかけた。

1997年の京都議定書では、一部の先進国が排出削減目標に合意したが、アメリカは批准せず、カナダは脱退した。

画像提供, Reuters

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左から、パリ協定採択を喜ぶ国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のフィゲレス事務局長、潘基文国連事務総長、ファビウスCOP21議長(仏外相)、オランド仏大統領

しかし、全員が祝賀ムードを共有しているわけではない。

活動団体「グローバル・ジャスティス・ナウ」のニック・ディアデン代表は「今回の合意が大成功だなどと評価されているのは、とんでもないことだ。世界各地で最も危険にさらされているコミュニティーの権利を損なっているし、人間が将来にわたって安全で生活可能な気候の下で暮らせるよう保証する拘束力のある内容は何もないというのに」と述べた。

温室効果ガスの排出量削減目標の提出や、実績点検など、パリ協定の一部は法的拘束力を伴う。しかし各国の削減目標には法的拘束力はない。

各国ごとに削減目標を強制しようとしたのが、2009年コペンハーゲン会議の失敗の原因だったという意見もある。

2009年当時、中国、インド、南アフリカの各国は、経済成長と発展を妨げるかもしれない条件の受け入れに合意しなかった。

これを受けて今回の交渉では、INDC(各国が自主的に決定する約束草案)という仕組みを導入し、議論の膠着を回避した。

INDCの仕組みをもとにパリの会議では、地球の気温上昇を産業革命以前の水準から2度より「かなり低く」抑えるという目標に向けて、各国が2020年以降の温室効果ガス排出を削減する計画をそれぞれ策定・提出した。

2週間にわたった会議で公表された報告書は、INDCにおける各国提案を総合すると、気温上昇は2.7度にしか抑えられないと指摘した。

欧州の環境保護団体「EG3」のニック・メイビー代表理事は、パリ協定は意欲的な内容で、履行するには各国政府とも真剣な取り組みが必要になると指摘する。

「パリ協定を受けて政府はかつてない規模と速度で気候変動に取り組むことになる。低炭素型経済への移行を食い止めることはもうできない。化石燃料の時代は確実に終わる」

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上から、各国が行動しなかった場合の2100年時点の気温上昇、現行政策のままの気温上昇、パリ会議で各国約束した政策による気温上昇

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温室効果ガスが2020年から減り始めた場合に予想される気温上昇(上)と21世紀の間ずっと排出を続けた場合に予想される気温上昇(下)