ケリー米国務長官がロシア訪問 シリア政策を協議

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モスクワに到着したケリー国務長官(15日)
ジョン・ケリー米国務長官は15日、訪問先のロシアに到着した。シリアの内戦終結に向けた政治的な工程をめぐって意見調整を行う。
ケリー長官は訪ロ中にプーチン大統領とラブロフ外相と会談する予定となっている。
米国とロシアは、シリアの内戦終結の形を決める工程にアサド大統領がどのように関与するかについて、長く対立してきた。
米国はアサド大統領の退陣を主張しているが、ロシアはシリア人のみが同大統領の処遇を決めることができるとの立場だ。
会談を前に、ロシア外務省は米政府が「良いテロリストと悪いテロリストという区別をしている」として米国のシリア政策を批判した。
ロシアは、過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点がシリア空爆の標的だと説明している。だが米国は、ロシアがアサド政権を支援するため穏健な反政府勢力を攻撃していると非難している。ロシアは米国の主張を否定している。
米国主導の有志国連合は2014年9月にシリアのISに対する空爆を開始したが、アサド政権と作戦内容を調整していない。
シリア内戦
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5年近く続くシリア内戦で25万人以上が死亡している(写真は政府軍による空爆後のダマスカス郊外)
サウジアラビアの首都リヤドで先週開かれたシリア反体制派各勢力の会合では、アサド政権との和平交渉に一致して応じることや政権移行プロセスにアサド大統領を関与させないことで合意している。ロシアは合意内容の受け入れを拒否している。
終戦協議の手順を決める国際会合が今週中にも予定されており、ケリー長官はその地ならしを目指している。
国際会議が実現できるか懐疑的な見方もあるものの、米国務省はロシアが示す「前提条件」が揃わなくても実施可能との立場だ。
シリア政府と反体制派との和平交渉は来年1月の開催が暫定的に予定されている。
ケリー長官は今回のロシア訪問で、ウクライナ東部の安定化に向けた継続的な取り組みについても協議する見通し。
なぜ内戦が始まったのか
政府に対する抗議活動が内戦に発展した。4年以上を経て現在は膠着状態にあり、アサド政権、IS、複数の反政府勢力、クルド人武装勢力のそれぞれが支配地域を持っている。
誰が誰と戦っているのか
首都ダマスカスやシリア中部、西部に集中している政府軍は、イスラム聖戦(ジハード)主義の「イスラム国」やヌスラ戦線、規模が比較的小さく複数に分かれた「穏健な」反体制派グループと戦っている。反体制派はシリア北部と東部が基盤。それぞれはお互いに反目している。
人的被害はどの程度なのか
25万人以上が死亡し、100万人程度が負傷。約1100万人が住まいを失い、そのうち400万人が国外に避難した。危険を冒して欧州へ逃れようとする人数は増えている。
国外からの反応は?
イランやロシア、レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」はアラウィ派が中心のアサド政権を支持する。一方、トルコやサウジアラビア、カタールはスンニ派を中心とした穏健な反体制派を支援しており、米国、英国、フランスも同じ反体制派を支持する。
ヒズボラとイランは地上軍を投入しているとみられ。ロシアと米国主導の有志国連合は空爆を展開している。