中国で反テロ法が成立 少数派締め付けに懸念

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テロ情報があった北京・三里屯地区で警戒する武装警官(26日)
中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は27日、新たな対テロ組織の設置や治安部隊の権限拡大などを定めた「反テロ法」を可決・成立させた。
新法に対しては、適用範囲が広く、反体制派や宗教的少数派の締め付けに利用される懸念があるとの声も出ている。
中国政府は、国内で起きたいくつかの襲撃事件が、イスラム教のウイグル族が多く住む同国西部・新疆ウイグル自治区の分離独立派が起こしたものだとしている。
北京では先週、繁華街の三里屯地区で欧米人を狙ったテロ情報があるとして、米英など一部の外国政府が注意を呼びかけた。
<解説>スティーブン・エバンス記者(北京)
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雲南省の鉄道駅でおきた刃物による襲撃事件の犠牲者を追悼しろうそくが並べられた(14年3月)
新たに成立した法律では、ひとつにまとめられた対テロ組織が作られる。中国の公安省(警察に相当)は新組織について、「テロ活動やテロリストを特定し、全国レベルでの反テロの取り組みをまとめる」と説明している。
国営メディアは、昨年3月に雲南省昆明市内の鉄道駅で刃物を持った集団が人々を襲い、29人が死亡した事件を例に挙げ、新法の必要性を説明した。この事件では、ウイグル族の4人が実行犯だとされている。
中国政府は、明らかに厳格な措置が、少数民族に対する抑圧ではなく、西側諸国と同じような「テロ対策」なのだと示そうと躍起になっている。
新法ではさらに、当局が個人の通信・通話を監視する権限を拡大する。政府は、他国と同様、市民の権利は侵害されないと説明している。
新法の概要
- 国営メディアによると、対テロの新たな部局と、全土にわたる情報収集をまとめる組織が設置される
- 電話会社やネットサービスのプロバイダーは「暗号解読を含む技術的な支援」が義務付けられ、過激思想の「情報の頒布を抑止する」ことが求められる
- 警察は銃や刃物を持った襲撃犯を撃退する「緊急事態」には武器を直接使用することが許される
- 軍は国外で反テロ作戦を実施することができる
- テロリスト活動についての情報の頒布は、偽のテロ情報を含めて禁じられる
- 事前に許可を受けたメディア以外が、テロ襲撃またはそれらへの当局の対応について報じることは、ネット上であるかないかを問わず禁止される
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2013年10月に北京の天安門広場で車両が歩行者に突っ込み炎上した事件で、当局はウイグル族の分離独立派による犯行だとした
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新疆ウイグル自治区のカシュガルにあるモスクに祈祷のため集まった人々(今年4月)
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