米、イランに追加制裁 弾道ミサイル開発で

画像提供, Reuters
弾道ミサイルを乗せた車両がイラン・イラク戦争を記念する軍事パレードに参加(昨年9月)
米政府は17日、イランの11の企業と個人を対象に新たな制裁を科すと発表した。国連が禁止する弾道ミサイル発射実験をイランが昨年10月実施したことへのもの。
対象となった企業と個人は米国の銀行システムが利用できなくなる。
米欧などはイランの核開発をめぐるイランと主要6カ国の合意に基づき経済制裁を解除したばかり。オバマ米大統領は17日の会見で、イランとの合意を「賢い」と評価した。
イランは拘束していたワシントン・ポスト紙のジェイソン・レザイアン記者を含むイラン系米国人4人を釈放。これとは別に1人マシュー・トレビシック氏が釈放された。オバマ大統領はレザイアン記者を「勇敢な人」と語っていた。
合意に基づいて釈放されたレザイアン記者とほか2人は釈放後、スイス・ジュネーブ経由でドイツ国内の米軍基地に飛行機で向かい、健康チェックを受けた。米政府筋によると、残る1人のノスラトラ・ホスラビ・ルーザリ氏は3人と一緒の飛行機には搭乗しなかった。
一方、米政府は制裁に違反したとして拘束していたイラン人7人に恩赦を与えた。
釈放に向けた交渉が昨年12月に行われていたため、米政府は新たな制裁について発表を控えていた。今回、レザイアン記者らが乗った飛行機がイランを離れたことを確認した上で発表されたという。
米政府、人質解放後イランに新制裁 疑いの連鎖は晴れるか
画像提供, Brett McGurk
ジュネーブに到着したレザイアン記者
「大きな脅威」
イランは国連の禁止に反し、核兵器の搭載が可能な精密誘導弾道ミサイルの実験を昨年10月に実施している。米財務省のアダム・ズービン次官代行(テロ・金融犯罪担当)は17日、「イランの弾道ミサイル開発は地域また世界の安全保障への大きな脅威であり、国際的な制裁の対象となり続ける」と述べた。
オバマ大統領は同日、国際原子力機関(IAEA)が、イランが核開発制限措置を履行したと確認したのを受け、「きょうは良い日だ。国際的な外交努力に何ができるか再確認できたからだ」と述べた。オバマ大統領はさらに、「立場の違いが理由で両国政府は何十年にもわたりほとんど対話してこなかった。結局それはアメリカのためにならなかった」と語った。
その上で大統領は、米国とイランの間には依然として意見相違があるとし、イランのミサイル開発を含む「不穏な行為に断固として反対し続ける」と述べた。
US President Barack Obama: "Iran will not get its hand on a nuclear bomb"
<英語ビデオ>オバマ大統領の会見
Iranian President Hassan Rouhani: "Everyone has realised Iran is reliable"
<英語ビデオ>イランのロウハニ大統領は「皆がイランが信頼できると気が付いた」と
「新たな章」
イランのハッサン・ロウハニ大統領は先に、核合意によってイランと世界との関係に「新たな章」が始まったと評価した。
核合意には、多くの政府や国連、欧州連合(EU)が歓迎の意を表明しているが、米国の一部の共和党議員やイスラエルは、イランが「テロを拡散している」として、合意を強く批判している。
イランが原油輸出を倍増させるとの見通しは、原油価格の継続的な下落の一要因になっている。北海ブレント原油先物は1バレル=29ドルを下回って先週の取引を終えている。
IAEAはイランのナタンズにある核施設にウラン濃縮活動をリアルタイムで監視できる装置を取り付けたと発表。イランはウランの濃縮率を3.67%までに留めることで主要国と合意している。
合意ではさらに、遠心分離機の大幅削減とアラクの重水炉改造を定めている。2項目とも核兵器の製造に使用可能な装置だ。
イランは自国の核開発は平和利用が目的だと終始主張してきたが、合意に反対する向きはイランが核兵器を作れなくなったわけではないと非難している。