アップル、iPhone販売台数は初の前年割れ見込みと

Apple store on 5th avenue

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米アップルは26日、2015年10-12月期決算を発表した。iPhoneの販売台数が2007年の発売以来、最低の伸びで、今年は初めて前年を割り込む見通しと明らかにした。

アップルによると、10-12月期のiPhoneの販売台数は7480万台で、前年同期の7450万台から微増。この四半期における同社売り上げの68%はiPhone販売によるものという。

1-3月期のは売り上げ見通しは500億~530億ドル(約5兆9000億円~6兆2500億円)。前年同期の売り上げは580億ドルだった。見通しの通りになれば、iPhoneの発売開始以来初めて売り上げが前年同期を割り込むことになる。

iPhoneの販売台数はアナリスト予想の7500万台を下回ったが、10-12月期の売り上げは過去最高の759億ドル(約9兆円)。純利益も184億ドル(約2兆1700億円)と過去最高を記録した。

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iPhone売れ行き失速でアナリスト懸念

ティム・クック最高経営責任者(CEO)は、「iPhone、アップル・ウォッチ、アップルTVの記録的な販売台数が」売上記録に貢献したと評価した。

しかしルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)は、同社は「非常に困難なマクロ経済環境に囲まれている」と認め、1-3月期にはiPhoneの販売台数は減少する見通しだと述べた。次の四半期については見通しを出していないという。

マエストリ氏は、業績が伸び悩んだ原因の一端はドル高にあると言い、ドル高の影響で50億ドル分の売り上げを失ったという試算を示した。

中国が「見たことのない弱含み」

中国、香港、台湾での販売台数は14%増だが、前年同期が70%増だったのに比べるとかなり減速した。

ロイター通信によると、マエストリ氏は中国市場の弱含みは「これまで見たことがない」と懸念を示した。

アップルにとって中国市場は売り上げの約25%を占める。その規模は欧州全体の合計よりも多い。

粗利益率は40.1%に拡大した。

「最高の貸借対照表」

CCSインサイトのアナリスト、ジェフ・ブレイバー氏はアップルの粗利益率が「業界基準をはるかに超えるもの」で、2160億ドル近い内部留保を手元に残していると指摘した。

クックCEOはアナリストたちに対して、「最高の貸借対照表」だと述べ、資金力はかつてない強力な状態にあると説明した。

アップル社株は時間外取引で2.7%下がり、97ドル28セントをつけた。

アップル株主でキャピタル・マーケッツのアナリスト、ダニエル・アイブス氏は、決算発表前に「みんながこぶしを握り締めるほど緊張していた」ことを思えば、「全体の成績は恐れていたよりは良かった」と評価した。

<分析>ローリー・ケスラン=ジョーンズ、BBCテクノロジー担当編集委員

これがほかの会社なら、記録的な売り上げと純利益を発表したのだから、投資家から温かく歓迎されてしかるべきだ。しかしアップルはこれまであまりに次々と最高峰の記録を打ち立ててきたので、上り詰めたらあとは下るしかない。しかも今回の決算は、投資家の懸念を裏付ける内容を含んでいる。

iPhoneほど利益性の高い商品を作り出した会社はほかにないだろう。しかしそのiPhoneの販売が要するに伸びなかったのだ。加えて次の3カ月には、2007年の販売開始以来初めての売り上げ減が見込まれている。

加えて中国の問題もある。まだ成長は続いているが、減速している。中国ではiPhoneはまだ憧れの的だが、アップルは中国市場が弱含みだと言う。そうした状況では、小米科技(シャオミ)のような地元企業の安い競合製品の方が消費者を引き付けるかもしれない。

もちろん「iPhoneピーク」の懸念は前にも浮上したが、iPhone6の大成功によって雲散霧消した。昨年の「6S」は小規模なアップグレードに過ぎなかったので、今年9月にはもっと大がかりな変更が期待できる。

しかし利益拡大を続けるために、新しい大ヒット商品を送り出さなくてはというプレッシャーが、アップルにかかっている。

アップル・ウォッチはその大ヒット商品にはならない。アップル・ウォッチの売り上げ実績についてまだ何の数字も発表されていない状態だ。

アップルのファンや投資家は、わくわくする次のイノベーションを待ちわびている。技術者1000人がいま開発に取り組んでいるのは、アップル・カーだという噂が。もしかするとそれが、ファンや投資家の期待に応えるイノベーションになるのかもしれない。