シリア・アレッポの戦闘で5万人が難民に=赤十字

トルコ国境に向かうバスに乗車した少女

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トルコ国境に向かうバスに乗車した少女

赤十字国際委員会(ICRC)は10日、シリア北部の要衝アレッポをめぐる政府軍と反体制派勢力との攻防で、約5万人が難民化していると警告した。

ICRCはまた、アレッポへの水の供給が絶たれるなどして、人道的状況が急速に悪化していると指摘した。

シリア政府はロシアによる空爆の支援を受け、反体制派が掌握していたアレッポを奪還しようとしている。

シリアと国境を接するトルコは、国境に足止めされた3万人のシリア難民を受け入れるよう求められている。

ICRCは発表文で、人道支援の補給ルートが遮断されており、市民たちを「とてつもない苦境」に陥れていると指摘した。シリアでのICRCの活動を指揮するマリアン・ギャッサー氏は、「気温は非常に低い上、十分な食料、水、シェルターを欠いており、住む場所を失った人々はとても不安定な状況のなかで生き延びようとしている」と語った。

国際医療支援団体「国境なき医師団」(MSF)はトルコ国境に近いアザズで続く戦闘のために医療体制は「崩壊寸前」だと警告した。MSFによると、戦闘を逃れた人々がすでに混雑した難民キャンプに押し寄せているという。

MSFのムスキルダ・ザンカダ氏は、「小さな子どもや高齢者を含め、人々が厳寒の外で少なくとも数日過ごさなくてはならなくなる危険がある」と述べた。

トルコはすでに、過去5年間で250万人以上のシリア難民を受け入れているが、同国政府は「制限をかけながら」受け入れを続けるとしている。

国連は、シリア政府とイランが支援する武力勢力がアレッポを包囲すれば、最大で30万人が人道支援を受けられなくなる可能性があると指摘している。

英国に拠点を置く反体制派の「シリア人権監視団」によると、政府軍などによる攻撃が激化した今月初めから、市民数十人を含む500人以上が死亡している。

シリア人権監視団がAFP通信に語ったところによると、クルド人武装勢力はシリア北部のミナク空軍基地からほかの反体制派勢力を排除した。

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アレッポ周辺の各勢力の支配地域と難民の数(国連など調べ)

10日に開かれた国連安全保障理事会では、各国がロシアにシリア政府を支援する空爆をやめるよう求めた。シリアの和平をめぐっては、一時的に停止した協議の再開を目指し、ドイツのミュンヘンで関係者会合が11日に開かれる予定となっている。

フランスのフランソワ・デラットル国連大使は記者団に対し、「(シリア)政権とその同盟者が、片手で相手を倒そうとしながら、もう片手で握手の手を差し伸べるふりをするのは許されない」と述べた。

しかし、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使は、ロシアが自らの行動を「申し訳なく思う」ようなことはない、と語った。チュルキン大使は、ほかの理事国が人道的状況を政治目的に利用しようとしていると非難した。

ロシアは自らが呼ぶところのテロリストが空爆の標的だとしているが、西側諸国はシリア政府と戦う反体制派が攻撃を受けていると指摘している。