【米大統領選2016】「キリスト教徒ではない」 ローマ法王がトランプ氏発言を非難

フランシスコ法王とトランプ氏

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は18日、米大統領選に立候補しているドナルド・トランプ氏がメキシコとの国境に不法移民を防ぐ壁を建設すると発言していることについて、キリスト教徒らしくないと述べた。

メキシコ訪問を終える際に質問を受けたフランシスコ法王は、「橋を築くことでなく、壁を造ろうと、それだけを考えている人は、それがどこであろうと、キリスト教徒ではありません」と語った。

トランプ氏は自分は「キリスト教徒であることを誇りに思う」と述べ、、法王の発言を引き出したメキシコに非があるとして「みっともない」と逆に批判した。

大統領選の共和党候補の中で支持率トップのトランプ氏は、米国内の不法移民1100万人の国外退去を主張するほか、メキシコ移民には「強姦犯」など犯罪人がいると述べている。

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ローマ法王の批判にトランプ氏 「ISISに攻撃されたら」

フランシスコ法王は米国民がトランプ氏に投票すべきかについては明言を避けた。法王は、「この人物がそのようなことを言ったのなら、その人はキリスト教徒ではない、私にはそれしか言えません。そういうことを言ったのか、確かめなくては。疑わしきは罰せずで、まだチャンスを与えたい」と語った。

選挙運動のためサウスカロライナ州を訪れているトランプ氏は、「宗教指導者が人の信仰を疑問視するなど、みっともないことだ。私は自分がキリスト教徒であることを誇りに思う」とし、「指導者、特に宗教指導者が、他人の宗教や信仰に疑義を述べる権利はない」と語った。

さらに、「私について否定的なことを言ったが、それはメキシコ政府が『トランプは良くないやつだ』と法王に信じ込ませたからだ」と述べた。

また、過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)にとってバチカンは「究極の戦利品」であり、攻撃を受けるようなことがあったなら、「ドナルド・トランプが大統領だったらこんなことは起きなかった、と法王は嘆くだろう」と語った。

大統領選でトランプ氏と競うマーコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)とジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は2人ともカトリック教徒だが、法王には霊的な指導を求めるが、政治的な助言は求めないと述べている。

ルビオ氏は米国には国境を管理する義務と権利があるとした。一方、ブッシュ氏は記者団に対し、「適切な場所の壁建設は支持する」と述べ、「キリスト信仰は本人と創造主の間のもので、我々があれこれ言うべきだとは思わない」と語った。

保守派キリスト教大学のリバティー大学の学長で、トランプ氏支持を表明しているジェリー・ファルウェル・ジュニア氏は、CNNの取材に対し、フランシスコ法王が行き過ぎた発言をしたと非難。「国をどう治めるべきか政治指導者に指示するような意図を、イエスは全く持っておられなかった」と述べた。

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トランプ氏の支持者からは、バチカンも大きな壁に囲まれているとの指摘が

トランプ氏は今月、フォックス・ニュースのインタビューで、フランシスコ法王のことを「非常に政治的な人物」と評し、「法王は、管理されていないメキシコ国境がどれほど危険なのか分かっていないと思う」と語っていた。

カトリック教徒は米国の選挙で重要な有権者集団を形成している。多くが人工中絶や同性婚に反対する共和党候補を支持する。

トランプ氏は一方で、福音派キリスト教徒の票を獲得しようとしており、往々にして成功してきた。しかし、共和党の候補たちはトランプ氏の宗教心は真摯でないと主張している。

テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)の選挙チームは、トランプ氏が1999年のテレビインタビューで人工中絶について「とても賛成」だと述べている映像を選挙広告で流している。

長老派の信者だとするトランプ氏は先月、バージニア州のキリスト教大学を訪れた際に好きな聖句を問われものの答えにつまり、からかわれた。

トランプ氏は、イエス・キリストが十字架処刑の前夜にとった最後の晩餐を象徴するキリスト教の儀式、聖体拝受について、「ワインをちょっと」飲み、「クラッカーをちょっと」食べることだと表現したことがある。