ジカウィルス 神経疾患引き起こす可能性=研究
ジェーン・ドリーパー健康担当記者、BBCニュース

画像提供, AP
中南米で感染が広がるジカウィルスが、重篤な神経疾患「ギラン・バレー症候群」を引き起こす可能性があるという新たな研究結果が発表された。
2月29日付の英医学誌「ランセット」に掲載された研究では、2年前に仏領ポリネシアでジカ熱が流行した際にウィルスに感染し、約6日後に神経疾患を発症した患者42人の血液サンプルを採取し調査した。
今回のジカ熱流行を受け、世界保健機関(WHO)は先月初旬に緊急事態を宣言している。
蚊が媒介するジカウィルスは、幼児の脳の発育不全である小頭症との関連が疑われており、感染者が増加する中南米で懸念が広がった。
しかし、専門家はジカウィルスがほかの疾病にも関係がある可能性を指摘していた。
ギラン・バレー症候群になると筋力が低下し、重篤な場合には呼吸困難となる。免疫システムが末梢神経を攻撃することで起きる稀な症状だ。
研究は、仏領ポリネシアの患者の血液を調べた結果、ジカ感染者の4000人に1人がギラン・バレー症候群になる可能性があると予測する。
研究の主要執筆者を務めた仏パルツール研究所のアーノ・フォンタネ教授は、「通常のギラン・バレー症候群よりも、症状の進行が速い」と指摘した上で、「しかし、急性期を過ぎると通常より速やかに回復した」と述べた。
ジカ熱とギラン・バレー症候群に関連の疑い
研究対象の42人には死亡者はいないが、発症から数カ月後でも歩行補助が必要だった。
恐れる必要はない
グラスゴー大学のヒュー・ウィリソン教授はBBCの取材に対し、「個人がジカに感染すれば絶対にギラン・バレー症候群になるなどと、脅かすべきではない。実際にリスクはかなり低いので」と指摘した上で、「しかし、もし100万人がジカに感染すれば、想定外の数百人がギラン・バレーにかかるわけだ」と語った。
WHOによると、中南米のブラジル、コロンビア、エルサルバドル、スリナム、ベネズエラ各国でギラン・バレーの症例数の増加が報告されている。
英ウェルカム・トラストのジェレミー・ファラー代表は、「今回の研究は、ジカとギラン・バレー症候群の因果関係について、これまでで最も説得力のある証拠を提示している」と述べた。「関連性が完全には証明されていないものの、症例報告の増加は、今回の流行でも同様の状況になっていることが示唆される」。
「ラテンアメリカで起きている危機の規模は我々の予想を超えたもので、今後数週間、数カ月にわたって、予想外の症状がジカウィルス感染で表面化するかもしれないと覚悟する必要がある」