【米大統領選2016】ブルームバーグ前ニューヨーク市長、出馬しないと発表

マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長

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マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長

第三極の独立候補として米大統領選の出馬を検討していたマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は7日、出馬しないことにしたと発表した。

米報道機関「ブルームバーグ」創設者の前市長はウェブサイトに「このリスクはとらない」と題した文章を掲載し、共和党から出馬している実業家ドナルド・トランプ氏や民主党のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)の反体制的な選挙戦の戦い方に懸念を表明。自分は勝つことができないし、出馬すれば票を分断し、トランプ氏や共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)を利することになってしまうと、不出馬の理由を説明した。

「選挙戦の現状、および上下両院を共和党が支配していることからして、私が出馬すればドナルド・トランプかテッド・クルーズ上院議員の当選につながる可能性が高い。自分の良心に照らして、そのリスクをとることはできない」

前市長は共和党の両候補が移民やイスラム教徒に対して示す姿勢を批判し、「(トランプは)記憶にある限り最も対立的で大衆扇動的な選挙戦を展開している。人々の偏見や恐怖をえじきにしている」と非難。クルーズ議員も同じように極端な立場だが、表現方法がトランプ氏ほどは「大げさ」でないだけだと指摘した。

トランプ氏は、国内の不法移民1100万人を全員強制送還し、イスラム教徒の米国入国を完全禁止すると公約している。

ブルームバーグ氏はもとは共和党員で、共和党らしい経済界寄りの政策を掲げるが、その一方で銃規制や同性婚を支持するなど社会的政策テーマについては共和党の大勢と異なる見解の持ち主だ。

長く大統領を目指してきた前市長は、民主党最有力のヒラリー・クリントン前国務長官がサンダース議員相手に苦戦する様子を見て、出馬の検討を表明していた。

一方でクリントン氏はこれまでの予備選で、南部諸州で圧勝し、民主党予備選の先頭を走っている。

ブルームバーグ氏は2002年から2013年の3期にわたりニューヨーク市長を務めた。市内の企業活性化と交通インフラの改善に尽力した。

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<分析>アンソニー・ザーー北米担当記者

ブルームバーグ氏

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メディア王マイケル・ブルームバーグ氏は結局、多くの政治ウォッチャーには明白だったことを認めるしかなかった。独自候補として大統領選に出馬すれば、ホワイトハウスをドナルド・トランプ氏やテキサスのテッド・クルーズ上院議員のような候補に差し出すようなものだと。

ニューヨークの前市長は、自分はそれなりの数の州で勝てると楽観視しすぎていた。他の2候補と十分に伯仲して結果が完全に膠着すれば、最終的に大統領を選ぶのは下院なので、その展開に期待していたのだ。しかしたとえそれができたとしても(現代米国史で独立候補がそこまで勝てたことはほとんどない)結果は同じだ。共和党優勢の下院は、共和党の大統領を選ぶ。共和党の有力候補2人が移民政策に極端な立場を掲げている状況で、そこに賭けるにはリスクが大きすぎると前市長は書いた。

ブルームバーグ氏の決断は、民主党の大統領候補はヒラリー・クリントン氏で決まりだと暗に受け入れたようにも読み取れる。そもそも前市長が出馬を検討していると報じられたのは、クリントン氏が序盤戦で苦戦する最中のことだった。そのクリントン氏は今、サンダース議員を引き離しつつあるように見える。サンダース氏の民主社会主義は、ブルームバーグ氏の大企業寄りの中道主義と真っ向から対立するものだ。