【ブリュッセル連続攻撃】国際空港の完全再開は何カ月も先

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ザベンテムの空港入り口を警備する警官や兵士(29日)
今月22日に連続爆発攻撃によって多数が死亡したブリュッセルのザベンテム国際空港が完全に再開できるのは何カ月も先になる見通し。運営会社のアルノー・ファイスト最高経営責任者(CEO)が明らかにした。
ファイスト氏は、爆発で破損した建物は、「空調からチェックイン・カウンターまで」すべて建て直さなくてはならないと語った。
空港の一部が間もなく再開すると期待されたものの、運営会社は30日も閉鎖が続くとした。
同空港と市中心部の地下鉄駅が標的となった連続攻撃では、32人が死亡、96人が依然として病院で治療を受けている。
ブリュッセルに本部を置く欧州連合(EU)の各機関は29日に、警備が強化されるなかで業務を再開。欧州議会では、所持品や車両の検査がさらに厳しくなった。一方で、非EU組織による催しの多くは延期されている。
臨時のチェックイン・カウンターの試験運用を始めるため、空港の職員約800人が28日に職場に戻った。臨時に使われる施設では警備が強化され、出発ラウンジに入る乗客の荷物検査を増やす。
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復活祭の休暇の後、地下鉄には通勤客が戻った(29日)
空港の再開には政府の承認が必要。乗客の処理能力は当初、1時間当たり800~1000人を目指す。従来の平均値は1時間5000人だった。
ファイスト氏は、「臨時施設では事件前の通常の乗客数を扱うことはできない」とし、「(爆発があった)建物の躯体は大丈夫だが、空調からチェックイン・カウンターまで、すべて建て直さなくてはならない。それには何カ月もかかる」と述べた。
ファイスト氏は当初、30日に空港の20%が運営再開できるとの見通しを示していたが、運営会社はその後、閉鎖が続くとツイッターを通じて明らかにした。
警察は27日、空港の爆発攻撃の実行犯とされる3人のうち1人の捜索を再開。警察は一時、地元メディアが「ファイサル・シェフー」との名前で報じた男性を拘束したが、証拠不十分で釈放している。男性は当初、事件前に空港の防犯カメラに映っていた、帽子を被り薄手のジャケットを着ていた容疑者とみられる男と同一人物だと考えられていた。ただし、この男性に対しては、「テロ暗殺」の疑惑が持たれている。
ベルギーの連邦検察は、男性の拘束に至った証拠を、その後の捜査で十分裏付けられなかったと述べた。
連続攻撃については、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出している。攻撃直後に死亡した28人に加えて、病院で治療を受けていた4人が死亡している。依然として病院で治療を受ける人々のうち、集中治療室にいる負傷者も多数に上る。
捜査が進むなか、ここ数日の間にベルギーやそのほかの国で数人が拘束されている。
・イタリアでは、パリ連続襲撃事件のサラ・アブデスラム容疑者を含む実行犯らの偽造身分証を作成した疑いでジャマル・エディン・ウアリという名前のアルジェリア人が尋問を受けた。
・ヤシン・A、モハメド・B、アブバカル・Oとだけ公表された人物が当局による26日の強制捜査で拘束された。テロ集団との関連が疑われている。
・オランダ・ロッテルダムではレダ・クリケット容疑者がフランスでの攻撃を計画していたとして逮捕された。
・アブデラマネ・Aとだけ公表された人物がブリュッセルで24日に逮捕された。路面電車の停車場で逮捕された際に足を撃たれている。
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パリ市庁舎で握手するブリュッセルのマイヨール市長とパリのイダルゴ市長(29日)
ブリュッセルのイバン・マヨール市長は、22日の事件前後にベルギーの捜査当局が間違いを犯したと認めている。
マヨール市長はパリ市議会でパリやブリュッセルでの事件について演説するため、パリを訪問。地元ラジオ局の取材を受けた同市長は、ファイサル・シェフーと呼ばれる人物の釈放は間違いだと主張し、この人物がブリュッセルの公園で、難民たちにイスラム聖戦(ジハード)主義者になる勧誘を行っていたと指摘した。
なぜこれほどまで多くのイスラム主義者をブリュッセル、特にモレンベック地域が生み出しているのか、と問われたマヨール市長は、パリでも同様の問題があると反論した。
同市長は、「なぜ、我々の地に生まれて我々の社会を攻撃するような子どもを、我々の社会が生み出すようになってしまったのか」と述べた。
パリとブリュッセルで起きた攻撃の連関図(上がブリュッセルの容疑者、下がパリの容疑者)