パナマ文書のデータベース、オンラインに 20万以上のオフショア口座

サンサルバドルのモサック・フォンセカ事務所を家宅捜索する捜査員(4月8日)

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サンサルバドルのモサック・フォンセカ事務所を家宅捜索する捜査員(4月8日)

中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した「パナマ文書」の膨大な資料が日本時間10日未明、非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ、本部・米ワシントン)のサイトoffshoreleaks.icij.orgに掲載された。20万以上のオフショア口座に関する情報が公表された。

富裕層がオフショア口座を用いて租税回避する手法を明るみに出したパナマ文書は、パナマを本拠地とする「モサック・フォンセカ」の内部文書。リークした人物は「ジョン・ドー」という(日本の「名無しの権兵衛」に相当)偽名を使っている。モサック・フォンセカは一切の不法行為を否定し、自分たちはハッキングの被害者だと主張している。

モサック・フォンセカは今月初め、データベース公表を阻止しようと差し止め請求を出したが、ICIJは公表に踏み切った。

公表された資料には、世界20カ所以上のタックスヘイブン(租税回避地)に設立された20万以上のペーパーカンパニーや基金、信託などの名前が連なる。オフショア企業は違法ではないが、その機能は資産の出所と所有者の実態を隠蔽し税金の支払いを回避することにある。

パナマ文書は、政治家や政府高官、現職や元職の国家指導者、著名人、スポーツのスター選手たちが、タックスヘイブンに資産を隠し持っている実態を明らかにした。

パナマ文書に関連して名前が挙がった中には、キャメロン英首相、プーチン露大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、アルゼンチンのマクリ大統領、アルゼンチンのサッカー選手、リオネル・メッシ氏、香港の人気俳優ジャッキー・チェン氏、スペインの映画監督ペドロ・アルモドバル氏などが含まれる。アイスランドのグンロイグソン首相は、議会初当選時に資産を申告していなかったことなどを認めて辞任した。

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パナマ文書に登場する企業が法人登記している場所

パナマ文書は1150万点の資料からなる。2.6テラバイト相当の膨大な情報量で、1年以上前に「ジョン・ドー」が南ドイツ新聞に提供した。同紙はICIJにアクセスを認め、ICIJを通じてBBCを含む複数報道機関から記者数百人が資料の分析に着手。内容は今年4月初めに報道された。

ICIJは、パナマ文書をインターネットで公表するにあたり、ウィキリークスのように情報の内容を問わず中身全てをネットに掲載するわけではないと説明。「データベースには、銀行口座や金融取引の記録は含まれない。電子メールその他の通信内容やパスポート、電話番号なども含まれない。吟味された限定的な情報を、公共の利益のために公表する」と方針を示している。

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パナマ文書のデータ量(右)とウィキリークスやHSBC関連など過去の漏洩文書のデータ量を比較

9日には世界300人の経済学者が合同書簡で、タックスヘイブンは富裕層や多国籍企業のためにしかならない、不平等を拡大するものだと批判し、各国指導者にタックスヘイブンを終わらせるよう求めた。経済学者たちは「タックスヘイブンの存在は、世界全体の富や良い状態に貢献しない。経済的な目的をなんら果たしていない」と批判している。

6日には、文書を漏洩した「ジョン・ドー」が声明を発表し、行動の動機は「所得の平等」だと説明。「銀行も金融規制当局も税務当局も失敗した。富裕層を免除して、中低所得層の市民を抑え込むことにだけ腐心する決定が下されてきた」と書いている。

「ジョン・ドー」は、自分は情報機関や政府のために働いたことはないとしている。また自分の刑事責任免除と引き換えに、司法当局の捜査・訴追に協力すると申し出ている。

漏洩元は「ジョン・ドー」を名乗っているが、性別は明らかにされていない。