ブラジル大統領、職務停止に 暫定大統領は団結を呼びかけ

弾劾決議で職務停止処分となったルセフ大統領は、政府が「サボタージュされている」と国民に訴えた(12日)

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弾劾決議で職務停止処分となったルセフ大統領は、政府が「サボタージュされている」と国民に訴えた(12日)

ブラジル上院は12日、政府会計粉飾の責任を問われていたルセフ大統領(68)の弾劾裁判の開始を賛成55、反対22で決議した。ルセフ氏はこの日から最大180日間の職務停止処分となり、連立を離脱していたテメル副大統領(75)が暫定大統領に就任した。13年続いた中道左派の労働党政権が事実上、幕を下ろした。

テメル氏は所信表明で「ブラジルの平和と団結を取り戻すのが急務だ。国を救う政府を作らなくてはならない」と危機感を示し、「経済的活力」の重要性を強調。「国の内外でブラジルの信頼性を再建し、新規投資を呼び込み、経済を再び成長させなくてはならない」、「国民の価値観と、経済再建能力を信じている」と述べ、「危機を話題にするのはやめて、代わりに働こう」と呼びかけた。

テメル氏はさらに、経済成長の必要性を強調しながら、ブラジルはまだ貧しい国で、福祉事業を守り拡大していくと約束した。さらに、ブラジルで多くの政治家や政府高官を巻き込んでいる国有石油会社ペトロブラスの贈収賄事件について、徹底的な捜査を支援すると述べた。

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「残酷だ」――弾劾裁判決定でルセフ大統領

テメル氏は経済を重視した顔ぶれの組閣を発表。2000年代に中央銀行総裁として経済発展に貢献したと市場の信頼が厚く、広く尊敬されているメイレレス氏を財務相に選んだ。

新閣僚に女性は含まれていない。ルセフ氏は、男性議員が圧倒的に多い議会が自分の排除に動いた背景には、女性差別も関係していると発言していた。

テメル氏は連立政権で最大勢力のブラジル民主運動党(PMDB)を率いる。PMDBが今年3月に連立を離脱し、ルセフ氏の弾劾手続きが加速した。ルセフ氏はテメル氏が「クーデター」に関与していると非難していた。

ブラジル上院は11日から20時間にわたり議論を続け、12日に弾劾裁判開始を決議した。新しく外相に指名されたセラ上院議員は、大統領弾劾は「苦いが必要な薬だ」と述べ、「ルセフ政権の存続の方が大きな悲劇となる」と発言していた。

12日午後に最後に上院を前にしたルセフ氏は、かけられた嫌疑をあらためて否定し、自分は法律違反を犯していないと力説。職務停止に追い込まれたことを「滑稽な芝居のよう」で「サボタージュ(妨害行為)」だと非難し、「不当」な扱いについてあらゆる法的手段で戦うと約束した。また「選挙結果やブラジル国民の民意、憲法への尊重」が損なわれたと非難した。

ブラジルは過去10年で最悪の経済停滞に苦しんでいる。2015年の失業率は9%、インフレ率は過去12年で最高水準に達した。

テメル暫定大統領とは

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・両親はレバノン出身。75歳。

・過去20年にわたりすべての大統領と協力し連立政権を作ってきた「キングメーカー」だが、自らが政府トップになったことはない。

・最大政党のブラジル民主運動党(PMDB)を率いる。3月に連立を離脱し、ルセフ大統領弾劾手続きを主導してきた。

・今年4月にリークされた録音では、早くも大統領就任演説を練習しているようだと言われた。