【米大統領選2016】トランプ氏とライアン氏会談、共和党一致を約束

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ドナルド・トランプ氏(左)とポール・ライアン下院議長
米大統領選で共和党候補になる見通しの実業家ドナルド・トランプ氏と、共和党で最高位の公職に就いているポール・ライアン下院議長が12日、ワシントンの共和党全国委員会本部で会談し、共に党内一致のために「誠心誠意尽くしていく」と述べた。ライアン議長はこれまで、保守としての理念に欠けるトランプ氏を支持できないと発言していた。
トランプ氏とライアン議長は共同声明で「素晴らしいやりとりだった」とコメント。「お互いの間のいくつかの違いについて正直に認めつつ、大事な共通点がたくさんあると認識している」として、「引き続き協議を重ねていく」が、党を団結させて本選で勝てるだろうと自信を示した。
会談後の記者会見でライアン議長は、トランプ氏の話を聞いて「とても前向きな気持ちになった」と話した。
トランプ氏は会談後、ツイッターで「DC(ワシントン)で最高の日」をライアン議長や共和党首脳部と過ごしたツイート。「色々すごくうまくいってる」と書いた。
自分の執務室で会談を仲介したラインス・プリーバス全国委員長は、成功だと評価した。
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プリーバス委員長は「会談は最高だった。党内一致に向けてとても前向きな一歩だった」とツイートした
共和党全国委員会本部を訪れたトランプ氏を、「反イスラムは非アメリカ」などのプラカードを掲げた多くの反対派が出迎えた。
共和党全国委員会本部前でトランプ氏に抗議する人たち
ライアン議長は昨年12月、トランプ氏がイスラム教徒の米国入国禁止を呼びかけたことについて、「この党が掲げるものとは異なるし、なによりこの国が掲げるものと異なる」と強く批判した。
これについてトランプ氏は今月12日、「単なる提案に過ぎない」と発言し、立場をやわらげたような印象を与えた。
2012年大統領選でミット・ロムニー候補の副大統領候補だったライアン氏は、信仰の自由や貿易など様々な問題についてトランプ氏と真っ向から対立している。
ライアン氏は連邦議会の共和党議員の間で人気が高い。昨年秋に前任のジョン・ベイナー下院議長が政界を引退すると後任に選ばれ、今年春にはトランプ氏の対抗馬として出馬するよう求める声が共和党内から強く上がった。
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共和党本部に到着したトランプ氏
しかしミッチ・マコネル上院院内総務など、トランプ氏支持に回る共和党幹部も増えている。
公職経験のないトランプ氏は、政治経験の最も少ない大統領候補のひとり。政界の「アウトサイダー」としての立ち位置が、ワシントン政界に幻滅する多くの有権者の支持を集めている。
最近のギャラップ社調査では、共和党寄り有権者の3人に2人が、トランプ氏を好感するという結果が出ている。
<解説> アンソニー・ザーカー、ワシントン
ポール・ライアン下院議長の物言いは、できちゃった婚を受け入れようとしている男のようだ。確かに不運な状況だが、もしかしたら一緒にいるのもそれほど悪くないかもしれないと。
ライアン氏はかつてトランプ氏のイスラム教入国禁止案を「保守ではない」と否定した。それが今では、2人を結びつける保守主義の「根本理念」がいくつかあると言う。どうやら2人とも憲法が大好きらしい。そして2人とも、三権分立を大いに支持するようだ。
それ以外は? 何とも言い難い。ライアン氏は12日の記者会見ではそれ以上は語らず、代わりにプロセスが始まったとか、種を植えたとか、溝を埋めたとか、そういう話に終始した。
トランプ氏が欲しがっている全面的な支持表明ではない。部分的な支持表明でもない。それでも11月になんとしてもホワイトハウスを奪還したい党にとって、和解へ向けた第一歩だった。
トランプ氏が代表する共和党の「真新しい新勢力」を、ライアン氏がいずれ受け入れるとするなら、その原動力は権力欲だ。2度の大統領選で連敗した共和党にとっては、奪われた権力への欲求が、党内一致への求心力となる。
<トランプ氏をめぐり割れる共和党重鎮>
○支持
・ケリー・エイヨット上院議員(ニューハンプシャー州選出)
・ベン・カーソン元候補
・クリス・クリスティー・ニュージャージー州知事
・ボビー・ジンダル前ルイジアナ州知事
・スコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事
・リック・ペリー前テキサス州知事
・マーコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)
○不支持
・ポール・ライアン下院議長
・ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事
・ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領
・ジョージ・W・ブッシュ前大統領
・ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事
・ベン・サス上院議員(ネブラスカ州選出)
○未発表
・テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)
・ジョン・ケーシック・オハイオ州知事