米動物園のゴリラ射殺 警察が捜査へ

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多くの人がゴリラ射殺は動物園と子どもの親の不注意のせいだと非難している
米オハイオ州シンシナティの動物園で28日に3歳の男児がゴリラ舎の堀に転落し、中のゴリラが射殺されたことをめぐり、地元警察は31日、当時の状況について捜査すると表明した。
シンシナティ動物園があるハミルトン郡検察のジョセフ・ディータース氏は、捜査結果をもとに警察と「刑事訴訟の可能性について相談する」と述べた。
動物園側はゴリラを射殺するしかなかったとの立場で、飼育エリアの安全対策に問題はなかったと主張している。
動物保護活動家らは動物園の対策不足だと非難している。
シンシナティに本部を置く、権利擁護団体「ストップ・アニマル・エクスプロイテーション・ナウ」は、米農務省に対し告訴状を提出したと発表した。
ゴリラ舎に落ちた男児は軽傷を負ったのみだったが、男児の両親はソーシャルメディアで激しく非難されている。
シンシナティ警察は31日、当初4歳としていた男児の年齢を3歳に訂正した。
警察は、捜査対象は「事故に至るまでの両親・家族の行動についてのみ」で、「シンシナティ動物園の運営や安全についてではない」と述べた。
警察の調書では、目撃者の話として、当初ゴリラは男児を守ろうとしていように見えたが、周囲の人々の悲鳴に興奮し男児を引きずり始めたと指摘している。
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射殺されたハランビ
射殺されたのは17歳のオス「ハランビ」で、絶滅危惧種のニシローランドゴリラ。
ゴリラ舎に3歳児落ちて…ゴリラ射殺
ビデオ映像には、浅い堀の中をゴリラに引きずられる男児が写っている。その後間もなく、動物園の職員によってゴリラは射殺された。
動物園は30日、事故への対応を弁明。麻酔銃では効くまでに時間がかかり、男児を助けられなかったはずだとして、射殺する以外に方法がなかったと述べた。
さらに、ゴリラの展示は安全で規則で定められた基準を上回っていると説明している。
しかし、「ストップ・アニマル・エクスプロイテーション・ナウ」のマイケル・バドキー氏は、舎内に人が入ることができるような展示をしていた動物園に対して農務省は罰金を科すべきだと語った。
同氏は、「週末に起きたことは、シンシナティ動物園の柵が、人が飼育エリアに入れないようにするには明らかに不十分だったことを明白にした」と述べた。さらに、飼育エリアの設備は30年以上たつ古いものだと聞いていると指摘した。
同氏はまた、シンシナティ動物園では今年3月にも、北極グマ2匹が舎を抜け出して飼育施設の廊下に迷い出ており、この時も運営が批判されていたと指摘した。
「#JusticeForHarambe」(ハランビのため正義を)――ソーシャルメディアでの反応
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「ハランビのために正義を」と書かれたポスター
男児の母親のミシェル・グレッグさんは、インターネット上で中傷されている。動物園がゴリラ射殺を弁明したことを受けて、ソーシャルメディアでは人々のコメントが相次いだ。
「Eddie Whrnbrg」さんはフェイスブックで、「問題は動物園じゃない、馬鹿な親だ」と書いた。
ツイッターでは「@blxxm83」さんが、「怠惰な親がやんちゃな子どもを監督できなかったせいで、絶滅危惧種の美しい動物が撃たれて死ぬわけか」とツイート。
「@brittrosenthal」さんは、「悲しいのは、ハランビが子どもの親以上に子どもを守ろうとしているように思えることだ」とツイートした。
一部では、グレッグさんは現在の職場から解雇されるべきという意見まで書かれていた。
グレッグさんはフェイスブックで、息子が「脳震とうと、かすり傷少々で済んだ。(中略)骨折や内臓の損傷はなかった」とコメントした。
さらに、自分への批判に対しては、「世間は、親がなぜ子どもから目を離すのかとすぐ非難するが、私を知っている人は、子どもたちをしっかり監視しているのを分かっている。事故は起きるものだが、きょう、適切な場所に人がいたことを感謝している」と書いた。
グレッグさんのフェイスブックページはその後削除された。グレッグさんの書き込みとほぼ同時に、フェイスブックで「ハランビのため正義を」というグループが作られている。
ネット上ではさらに、ハランビ射殺についてグレッグさんの責任が問われるべきとする請願書が作られ、30万人以上が署名している。