米副大統領、スタンフォード大性的暴行被害者に書簡 軽い量刑に世論反発

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バイデン米副大統領(2014年9月資料写真)
ジョー・バイデン米副大統領は9日、名門スタンフォード大学で性的暴行と強姦未遂被害に遭った女子学生あての公開書簡を公表した。事件については、有罪となった学生への量刑が禁錮6カ月にとどまり、その父親が息子の犯行は「たった20分の行動」だったと証言したことから、米世論は強く反発している。
バイデン副大統領は「勇敢な若い女性への公開書簡」と題した手紙を米バズフィードに送り、自分の被害体験を公表した若い女性を称賛した。
大学構内で性的暴行被害に遭った23歳の匿名女性は2日、法廷でブロック・ターナー被告(20)に向けて朗読した被害証言を、バズフィードに提供。サイト上では数百万人が閲覧したという。
「あなたは私を知らない。でも私の中に入った。だから私たちは今日、ここにこうしている」で始まる被害女性の証言は、近所のパーティーに出かけただけのはずが、気が付いたら病院の担架に寝かされていたことや、自分がどのように暴行されゴミ置き場に捨てられていたかの詳細を報道で知る羽目になったことなどを赤裸々に語っている。
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サンタクララ郡高裁に入廷するブロック・ターナー被告(20)。複数の目撃者が、意識不明の女性を性的に暴行する様子を見たと証言した。
スタンフォード大の水泳選手だったターナー被告は今年3月、意識不明の女性を性的に暴行した罪で有罪となった。検察によると、昨年1月に意識不明で倒れている女性を被告が性的に暴行する様子を目撃した2人が、被告を地面に押し倒したという。被告は3件の重罪について有罪となったため、最大で禁錮14年の判決を受ける可能性があった。
しかし量刑言い渡しで裁判長は、禁錮刑が被告に与える影響について懸念を表明し、郡刑務所で禁錮6カ月という軽い量刑を言い渡した。また被告の父親は量刑言い渡しに先駆けて法廷で、自分の息子はわずか「20分の行動」について高い代償を払わされており、犯罪歴もないのだから厳罰に値しないと主張していた。
軽い量刑と父親の主張に、米世論は激しく反発している。ソーシャルメディアでは、アーロン・パースキー裁判長の辞任を求める書き込みが相次ぎ、辞任要求嘆願には100万人近くが署名した。
大学構内での性暴力と戦うホワイトハウスのキャンペーンを主導するバイデン副大統領は、被害女性への手紙で激しい怒りを表明。「私はあなたの名前を知りません。けれどもあなたの言葉は、永遠に魂に刻まれました。あなたの言葉は、あらゆる年齢のすべての人が必ず読むべきものです。あのような言葉をあなたが書かずに済んだらどんなに良かっただろうと、心から思うのですが」と書いた上で、女性が受けた被害に「激怒している」と感情をあらわにした。
副大統領は「毎年毎年、5人に1人の女性が大学構内で性的に暴行されている。そういうこの国の大学の風土が、あなたを裏切ったのです」、「あなたの物語に心動かされた何百万もの人は、決してあなたを忘れません」と語りかけた。
「あの男があなたにしたことをあらためて振り返り追体験するのは、体がねじれるほど辛いことだったでしょう。それでもあなたは、そうした。別の誰かが同じ犯罪の被害に遭わないように、自分の力で防ごうとした」と副大統領は思いやり、「あなたは、息をのむほど勇敢な人です」「あなたは戦士です」と称えた。
さらに副大統領は、「被告の父親が軽々しく『20分の行動』と呼んだものは、決してあなたを決定づけたりしません。しかし被告の男を決定づけるものです。世界中の人があなたを応援していて、私もそのひとりです。被害者に何度こう繰り返しても言い過ぎにはならないので。あなたを信じています。あなたのせいじゃありません。あなたが耐えた経験は決して、決して、決して、女性のせいではないのです」と強調した。