オバマ氏、トランプ氏提案は「私たちが求めるアメリカではない」

トランプ氏を強く非難するオバマ大統領(14日)

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トランプ氏を強く非難するオバマ大統領(14日)

米フロリダ州オーランドの乱射事件を受けて、共和党大統領候補になる見通しのドナルド・トランプ氏が、ムスリム(イスラム教徒)米国入国禁止をあらためて提案していることについて、バラク・オバマ米大統領は「私たちが求めるアメリカではない」と強く非難した。

オーランド乱射の容疑者がアフガニスタン系米国人で、過激派組織「イスラム国」に忠誠を誓っていたとされたため、トランプ氏は13日、米国にテロ攻撃をしたことのあるすべての国の国民の入国を禁止するべきだと主張。自分が大統領になれば、単独の大統領令によって「米国の国益や安全保障を損なう恐れのあるすべての種類の人について、米国入国を停止する」ことができると述べた。

トランプ氏はさらに、オバマ大統領が事件について語る際、「イスラム過激主義」という言葉を使わなかったことを批判し、大統領を辞任すべきだと述べた。

これに対してオバマ大統領は14日、かつてないほど強い調子で「アメリカ合衆国の大統領候補として共和党が指名するだろう人物」を厳しく非難した。

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オバマ氏、トランプ氏の発言を強く非難

オバマ氏は、米国の建国の基礎は信仰の自由で、入国者に「宗教検査」のようなものをするなど、憲法違反だと指摘。

「すべてのムスリムは同じだと決めつけ、ひとつの宗教全体と戦争しているかのような物言いをするなら、テロリストの片棒を担ぐようなものだ」とオバマ氏は述べ、移民や特定の宗教の全員に指を差すような物言いは「いったいどこで終わるんだ?」と強く問いただした。

「オーランドの犯人もサンバーナディーノの犯人のひとりも、フォート・フッドの犯人も、みんな米国市民だった。ムスリム米国人全員に、ほかと違う扱いをしようと言うのか? 特別監視対象にしようとでも言うのか? 単に信仰を理由に差別し始めようと言うのか?」とオバマ氏は畳み掛け、それは「私たちが求めるアメリカではない」と言明した。

大統領はさらに、「イスラム過激主義」という言葉を簡単に使わないのは、自分が過激主義との戦いで勝つために慎重だからだと、トランプ氏の批判を一蹴した。

マティーン容疑者はニューヨーク出身。生まれた地区は、トランプ氏の出身地と非常に近い。

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【オーランド乱射】繰り返し撃たれた生存者「もう死ぬんだと」

<分析>ニック・ブライアント、ワシントン

オバマ大統領はしばしば、超然としすぎている、冷静すぎる、物言いが丁寧すぎると批判される。しかし今日の国家安全保障会議の後は怒りもあらわに、将軍を横に、大統領としてドナルド・トランプ氏に反論した。ムスリムの米国入国を禁止せよというトランプ氏の名前は、あえて口にしなかった。口にしなかったことでさらに、その怒りはあらわだった。

オーランドの虐殺について「イスラム過激主義」という表現を使わなかったからと大統領辞任を求めたトランプ氏に、大統領は明らかに激怒していた。

トランプ氏はこれに対してさらに、タフな物言いで反論し、大統領の愛国心を疑問視した。オバマ氏は弱い最高司令官でイスラム国との戦いぶりはまるで不十分だと考える、忠実なトランプ支持者は大喜びだろう。しかし共和党の穏健派はこれであらためて、トランプ氏の気性や判断力を疑問視するかもしれない。

現代の米国では、オーランドの虐殺のような悲惨な出来事は、国を団結させると同じくらい、国の分断を浮き彫りにする。怒りに満ちた今回の選挙戦のさなかにあっては、ことさらに分断があからさまになった。

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犠牲者を悼むオーランドの人たち