ソフトバンク、英半導体設計ARMを3.4兆円で買収へ
サイモン・ジャック、ビジネス担当編集委員

画像提供, Getty Images
ソフトバンクの孫社長
日本のソフトバンクが英半導体設計会社ARMホールディングスを240億ポンド(約3兆3500億円)で買収することで両社が合意した。17日までに明らかになった。
ARMの取締役会は、株主に買収提案に応じるよう求める見通し。ARMの時価総額は15日終値換算で168億ポンドで、買収提案額は50%近い上乗せとなる。
英ケンブリッジに本社を置くARMは、同国のテクノロジー業界の中で最有力企業とも言える存在で、ARMが開発した半導体はアップルのiPhoneなどにも使われている。
買収交渉に近い筋によると、ソフトバンクは、家庭や企業などで、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)分野でARMが強みを生かせると考えている。
英国で発足したばかりの新政権にとっては、買収提案はジレンマとなる。メイ首相は、高額な役員報酬に加えて、海外企業による買収の一部が国益に反する可能性についても強い関心を持っている。
一方で、先月の国民投票で決まった英国の欧州連合(EU)離脱が、海外からの投資を抑制することにはつながらないと示したいとも考えている。
BBCの取材では、ソフトバンクは英国内でのARMの人員を今後5年間で2倍にするとしている。政府の介入がなければ、株主が最終的な判断を下す。
1990年に設立されたARMは、現在3000人以上を雇用している。
画像提供, Rolls-Royce
ウォーレン・イースト氏はARMホールディングスのCEOを2001年から13年まで務めた
ARMの成功は、同社の最高経営責任者(CEO)を2001年から13年まで務めたウォーレン・イースト氏に負うところが大きい。同氏は2014年に、工学とテクノロジー分野への貢献によって大英勲章第3位(CBE)を受章している。
イースト氏は昨年7月に、航空機エンジンを手掛けるロールスロイスのCEOに就任した。
2013年には、当時のARM会長だったサー・ジョン・ブカナンがイースト氏について、CEO時代に会社を「変身させた」と述べている。
ソフトバンクは、世界最大級のテクノロジー企業で、創業者で起業家の孫正義氏が社長を努める。
同社はこれまでに、英ボーダフォンの日本事業や米スプリントを買収している。2013年のスプリント買収額約200億ドル(当時の円換算で約1兆8000億円)は、日本企業の海外M&A(合併・買収)としては過去最大規模だった。
ソフトバンクの株価は過去1年間で15%下落している。