不正取引また起きる可能性 UBS元トレーダーインタビュー

アドボリ被告

スイス最大の銀行UBSの巨額損失事件をめぐり、2012年に詐欺行為で有罪判決を受けたロンドンの元トレーダー、クウェク・アドボリ被告(36)は、不正の再発予防に向けた業界の対策は不十分だと述べた。

BBCの取材に応じたアドボリ被告は、同氏にとって初めてのテレビ・インタビューで不正行為を謝罪しつつも、銀行業界には依然として利益相反が存在すると指摘し、トレーダーたちは「何としても」利益を上げるよう求められていると語った。

架空の取引によって巨額の損失リスクを隠ぺいするという不正行為が再び起きる可能性はあるかと問われたアドボリ被告は、「もちろん」だと答えた。

英国で過去最大の不正取引事件をめぐる裁判で検察は、アドボリ被告を「巧みな詐欺師」、「洗練された嘘つき」と非難。同被告に対しては出身国ガーナへの送還命令が出されている。

英国に留まることを希望するアドボリ被告は、12歳から英国に住む自分が英国民と変わらないほど「文化的に同化している」とし、金融業界の改革に自らの経験を生かすことができると主張している。

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アドボリ被告は2012年に禁錮7年の有罪判決を受けた

1年前に釈放されたアドボリ被告は、いまも収入の道が閉ざされている、と述べた。友人たちとエジンバラに住む同被告は、銀行業界の法令順守に関連した会議で無報酬で講演している。

アドボリ被告に対しては2012年に詐欺容疑2件について有罪判決が出ており、禁錮7年が言い渡された。

銀行業界の行動は当時から変化したかとの問いにアドボリ被告は、「いや、まったくそうでない」と述べた。

アドボリ被告は、「私が話した若い人や元同僚たちは、何としてでも成果を出すために、同じ問題、同じ相反、同じ圧力を抱えている」と語った。

「業界の構造が原因だ。この業界の収益は圧縮され続けているため、利益を出すためにリスクを取らなくてはならない。そして、もし投資銀行が過去と同じような利益率を求めるなら、残された道はより大きなリスクをとることだ。しかし、政治的には、リスクテークを抑制し、利益率を抑えることが求められる。だが、2つは対立する目標だ」

アドボリ被告は、「この対立のために、人々はグレーゾーンに陥るわけで、(不正行為が)再度起きる可能性はもちろんあると思う。今後1、2年で大きな金融危機の新たな段階が始まる可能性がある状況では特にそうだ」と語った。

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アドボリ被告は架空の取引によって巨額の損失リスクを隠ぺいしていた

アドボリ被告は、含み損が80億ポンド(約1兆円)を超え、UBSを破綻させる可能性があった当時の自らの行為について、謝罪した。

アドボリ被告は、不正行為はUBS行内で把握されていたと主張し、高い利益水準を維持するよう大きな圧力が自分に掛けられていたとしている。

UBSは行内で知っている人物はいなかったとしている。また、UBSトレーダーで起訴されたのはアドボリ被告のみだ。