【リオ五輪】五輪チケット不正販売事件で逮捕のIOC理事、休職

ブラジル警察は記者会見で、逮捕したヒッキー理事のIOC身分証を提示した(17日)
ブラジル警察は17日、リオデジャネイロ五輪観戦チケットの不正販売事件に関与した疑いで、国際オリンピック委員会(IOC)のパトリック・ヒッキー理事(71)(欧州五輪委連合会長、アイルランド五輪委会長)をリオ市内のホテルで逮捕した。アイルランド出身のヒッキー理事は、逮捕後に病院に運ばれた。理事としての職務は休職することになった。
ブラジル警察は、額面より高額でオリンピック観戦チケットを転売する仕組みに理事が関わっていたとしている。転売による不正利益は1000万レアル(約3億円)に上る可能性があるという。
警察によると、捜査員が17日朝にヒッキー理事のホテルの部屋を訪れると、妻が応対した。理事のIOC関連の書類を持っていた夫人は捜査員に、夫は週末にアイルランドへ帰国したと説明したという。
「ホテルにはもう一室、息子名義で借りている部屋があるのに気付きそこへ行くと、ヒッキー容疑者がひとりでいるのを発見した」と、記者会見でロナルド・オリベイラ刑事は説明。「室内にはほとんど何もなかった。服も何もなく、バスローブを着ていた」。
警察に連行されるパトリック・ヒッキーIOC理事
ブラジル警察はすでに、開会式当日の5日に英スポーツ・チケット販売会社THGのアイルランド人幹部ケビン・ジェイムズ・マロン容疑者を逮捕しており、ヒッキー理事の逮捕もこれに関係していると話している。
リカルド・バルボサ刑事はBBCに、マロン容疑者の金庫から、販売用と明示された700枚以上のチケットが見つかったと話した。
「接待プランの一部に違法に見せかけた」チケット転売計画の証拠を、警察は入手していると刑事は説明した。
THGスポーツは容疑を否定し、マロン容疑者がチケットを保管していたのは転売目的ではなく、アイルランドの正規チケット業者「プロ10マネージメント」の担当に渡す予定だったと説明している。
「プロ10マネージメント」も12日に声明を出し、いっさいの不正行為を否定している。
THGスポーツは2012年ロンドン五輪と2014年ソチ五輪について、アイルランド、ギリシャ、マルタで正規のチケット販売業者だった。
ヒッキー理事の息子スティーブン氏は2012年に、THGスポーツに勤めていた。
ブラジル警察のバルボサ刑事はBBCに対して、「プロ10がチケットを入手し、それをTHGが転売するという仕組みのために、プロ10は作られた」というのが捜査員の見立てだと説明。アイルランド五輪委がリオ大会チケットをTHGに販売させようとしたからだと、警察は見ているという。
ブラジル当局は15日、THGスポーツの親会社オーナー、英国人富豪マーカス・エバンス氏をはじめTHG関係者4人の逮捕令状を発行。17日にはさらにプロ10マネージメント幹部3人の逮捕令状も出ている。
画像提供, AFP
マロン容疑者逮捕後の記者会見で、ブラジル警察は押収したチケットの一部を提示した(8日)
ヒッキー理事の逮捕を受けて、欧州50カ国の五輪委員会を束ねる欧州五輪委連合の後任会長は、ヤネス・コチヤンチッチ副会長が務める。
アイルランド五輪委員会は声明で、「本件が完全に解決するまで」ヒッキー会長は休職すると発表。事実関係の解明に全面協力を続けていくと述べた。
柔道選手だったヒッキー氏は、2012年にIOC理事に就任。国際スポーツの世界で影響力をもつ重鎮となった。
アイルランドの放送局RTEの取材に対してヒッキー理事は先週、不正販売への関与を否定していた。
IOCはいかなる捜査にも協力すると約束した上で、ヒッキー理事は有罪が確定するまで推定無罪とされるべきだと強調した。