【リオ五輪】サンバで閉会、五輪旗は東京へ

画像提供, AFP
リオ五輪閉会式で踊るサンバ・ダンサーたち
今月5日に始まったリオデジャネイロ・オリンピックは21日夜(日本時間22日午前)、見事なカーニバルのような祭典で閉会した。五輪旗は正式に、2020年大会を開く東京に渡された。風雨で濡れるマラカナン競技場では、ブラジルのアートと東京の鮮やかなメッセージが人目を引いた。大会には206カ国と難民選手団から1万1303人のアスリートが参加した。
閉会を宣言した国際オリンピック委員会(IOC)のトマス・バッハ会長は、「素晴らしい都市で開かれた素晴らしいオリンピックでした。この16日間、誰にとっても大変なこの時代に、団結したブラジルが抑えがたい生きる喜びを表現して、私たちを元気づけてくれた」と称えた。
リオデジャネイロ五輪大会組織委員会のカルロス・ヌズマン会長は、「リオの大会は大きなチャレンジだったが、チャレンジして成功した。この国と町と人々を誇りに思う。リオは歴史に応えた」とあいさつした。
画像提供, AFP
マラカナン競技場から上がった花火
画像提供, AFP
競技場の地面から樹が大きく育ち、再生を表現した(21日)
画像提供, Getty Images
米国選手団の旗手は体操で金メダル4つ獲得のシモーン・バイルス選手
画像提供, Helen Glover
英国選手団は光る靴で入場。写真は、ボート2冠のヘレン・グローバー選手
画像提供, Getty Images
英国選手団の旗手は女子ホッケーのケイト・リチャードソン=ウォルシュ主将
画像提供, Getty Images
一躍有名になったトンガのテコンドー代表ピタ・タウファトファ選手も再び登場
画像提供, AFP
雨を浴びながら踊るアスリートたち
次は東京の番
画像提供, Getty Images
五輪旗を受け取った東京都の小池百合子知事
セレモニーでは、 リオデジャネイロのエドゥアルド・パエス市長が五輪旗を一旦、バッハ会長に返却。会長は続けて、五輪旗を東京都の小池百合子知事に手渡した。
これを機に会場では12分間にわたり、東京の魅力を紹介する見事な映像や踊りが披露された。日本の漫画やアニメ、ゲームの人気キャラクターが次々に登場し、人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のマリオが渋谷からリオの会場に通した土管を通って、マリオの扮装をした安倍晋三首相が登場した。
画像提供, Getty Images
「マリオ」としてマラカナン競技場に登場した安倍晋三首相
ひとつの時代の終わり
ジャマイカの陸上代表、ウサイン・ボルト選手(30)は、大会前から公言していた前例のない「トリプル・トリプル」(100メートル走、200メートル走、400メートルリレーの3種目3連覇)を達成し、引退を宣言した。
5大会連続出場した米国の競泳代表マイケル・フェルプス選手(31)は、リオ大会で金5個を含むメダルを6個獲得し、五輪メダル総数を28個に伸ばした。フェルプスの貢献もあり、米国チームアはメダル総数121個と1位。自国外の大会で過去最多のメダル数を記録した。
一方で若手に目を移すと、南アフリカのウェイド・ファン・ニーケルク選手(24)は、17年前にマイケル・ジョンソン選手がたてた400メートル走の記録を破り、リオ大会の「顔」のひとつとなった。体操女子で金メダル4つを獲得した米国代表シモーン・バイルス選手(19)も同様だ。
さらに米国競泳女子ではケイティー・レデッキー選手(19)が金4個と銀を1個を獲得し、フェルプス以降の米競泳界も盤石と思わせた。
画像提供, BBC Sport
リオ五輪のメダル獲得選手トップ10
「初」の多い大会
リオ五輪ではフィジー、ヨルダン、コソボがそれぞれ初のメダルを獲得。しかもいずれも初メダルが金メダルだった。
バーレーン、プエルトリコ、シンガポール、ベトナム、タジキスタンの選手も初メダルを得た。
オリンピックで世界記録を認定する競技は7種目(アーチェリー、陸上競技、近代五種、自転車トラック、射撃、競泳、重量挙げ)で、この中で27の世界新記録が打ち立てられた。
開催国にも金
ブラジルは大会3日目にリオ出身のラファエラ・シルバ選手(24)が柔道女子57キロ級で、早々に金メダルを獲得した。
20日にはサッカー決勝でドイツを下し、五輪サッカーでは初の「金」を獲得。ネイマールがPK戦で勝利のゴールを決めると、2年前のワールドカップ準決勝で1―7と大敗したドイツ相手だけに、マラカナ競技場の観衆7万8000人は湧きに湧いた。
さらに大会最終日には、男子バレーボール決勝でイタリアに勝ち優勝した。
ブラジルはメダル19個(金7個)を獲得し、メダル数では13位だった。
問題もいろいろ
大会前には、ロシアのドーピング問題やジカウイルスへの警戒、リオの治安やインフラ、会場設備への懸念などが話題となっていた。
始まってみると、大事件はなかったが、いくつかの問題はあった。
・飛び込み用プールが緑になった。
・競技場の空席が目立った。
・ボクシングでは判定に異論が相次いだ。
・馬術会場の報道陣テントに銃弾が撃ち込まれ、報道用バスが襲撃されるなど、警備上の問題があった。
・自転車ロードレースのコースが「危険」と問題視された。
・ドーピングで一時出場禁止になったもののスポーツ仲裁裁判所の裁決で出場し、銀メダルを獲得したロシア競泳女子のユリヤ・エフィモワ選手が何度もブーイングされた。
・柔道男子100キロ超級でイスラエルのオル・サッソン選手に敗れたエジプトのイスラム・エル・シェハビ選手が握手を拒絶した。
しかしおそらくもっとも恥ずかしい思いをしたのは、米国競泳男子の金メダリスト、ライアン・ロクテ選手かもしれない。
チームメイト3人とリオで強盗に襲われたと警察に届け出たロクテ選手は、通報が虚偽だったとブラジル当局に指摘され、自分たちは「大げさ」に言い過ぎたとブラジル国民に謝罪する羽目になった。
オリンピック精神
IOCは今年6月、初の難民選手団として10人の難民選手が大会に参加すると発表した。競泳、柔道、陸上の選手たちは、IOCの旗の下で出場した。
マラソンに出場したエチオピア出身のヨナス・キンデ選手は「これでみんな平等だ。ほかの人と同じに、人間らしく競技に参加する」と喜んだ。
このほか、陸上女子5000メートル走では、接触して倒れた米国とニュージーランドの選手同士が互いを助けあった。米国のアビー・ダゴスティノ選手とニュージーランドのニッキー・ハンブリン選手はこれで、フェア・プレー賞を授与された。
また、友愛精神の延長とでもいうべきか、結婚のプロポーズもいくつかあった。