ブルキニ禁止にフランス裁判所が凍結判断 弁護士は順守求める

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ブルキニを着た女性。17日、仏マルセイユで
イスラム教徒の女性が肌の覆う水着「ブルキニ」をフランスの複数自治体が禁止したことについて、行政裁判の最高裁にあたる国務院は26日、禁止措置は「信教と個人の自由という基本的自由を、深刻かつ違法に侵害する」と判断し、凍結を命じた。ニース市では海水浴場でブルキニ姿の女性が警官の取り締まりを受ける様子が撮影され、広く論争となっていた。国務院は後日、最終判断を示す。
「ブルキニ」とは、イスラム教徒の女性が顔を隠す装束を意味する「ブルカ」と、「ビキニ」を組み合わせた造語。商標でもあるが、今では全身を覆うイスラム女性用の水着全般を指す。
国務院判断は、ビルヌーブ・ルベ村に対するものだが、同様の禁止措置を導入した南仏リビエラ地方などの約30の自治体に対する前例となる。
ビルヌーブ・ルベをはじめ各自治体の「ブルキニ禁止」は、ブルキニを直接名指しはしていないが、海水浴場での水着は公序良俗と政教分離の理念を尊重しなくてはならないとしている。
ビルヌーブ・ルベ村のリオネル・ルカ村長は、「自分たちのビーチに、にこにこと親しげなシャリア法(イスラム法)が欲しいのか、(フランス)共和国の規則が欲しいのか、決めなくてはならない」と述べた。
これまでに少なくとも3つの自治体の首長が、海水浴場のブルキニ禁止を継続すると表明している。
これに対してビルヌーブ・ルベ村を国務院に提訴した人権団体「ヒューマン・ライツ・リーグ」(LDH)のパトリス・スピノジ弁護士は、国務院の判断に従わない首長はひとりずつ提訴して法廷で争うと述べ、順守を求めた。国務院への提訴はLDHと、ムスリム人権団体「反イスラモフォビア共同体」(CCIF)が合同で行った。
仏ブルキニ禁止にイスラム教徒はSNSで批判や皮肉
スピノジ弁護士は、国務院の前で報道陣に対し、「法的前例となるための判断だ」と述べ、各自治体でブルキニを着ていると罰金を科せられた人たちは返還請求ができると話した。
CCIFのマルワン・ムハマド代表は、国務院判断を歓迎したが、「(禁止措置がもたらした)害は消すことができない」と憂慮した。
国務院判断に従わないと表明しているのは、ニース市、フレジュ市、コルシカのシスコ村の首長。フレジュの右派市長ダビド・ラシュリーヌ氏はAFP通信に対し、自分が指示した禁止措置への「法的手段がとられたわけではなく」、禁止は「まだ有効」だと述べた。
ニース市役所の報道担当は、今後も海辺でイスラム教の衣装で肌をすっぽり覆う女性には「罰金処分を継続する」と表明した。
シスコ村のアンジュピエール・ビボニ氏は、禁止措置は「住民と資産の安全のため」継続すると述べた。シスコ村のビーチで今月半ば、地元の若者と北アフリカ系の家族との間に乱闘騒ぎがあり、5人が負傷している。
バルス首相は、フェイスブックでブルキニ禁止を支持し、ブルキニは「公共の場所における政治的イスラムの承認」にあたると批判していた。

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仏ニースの砂浜で「ブルキニ」を着ていた女性を警察が取り締まった。ニースでは7月にイスラム過激派の攻撃で80人以上が死亡している。
フランス当局は、イスラム過激主義者によるニースやパリの大量殺人などを受けて、公共の場でのイスラム教の服装が秩序維持にどういう影響を与えるか、懸念を表明している。
世論調査によると、多くのフランス人がブルキニ禁止を支持しているが、国の内外で激しい議論を巻き起こした。イスラム教徒の住民は、自分たちが不当な攻撃の対象にされていると警戒している。
ニースのビーチで23日にブルキニ姿の女性が警察の取り締まりを受けている様子の写真が広く拡散され、さらに論争は激しくなった。
フランスは2010年に欧州で初めて、イスラム女性の顔をすべて隠す「ブルカ」と、顔を部分的に隠す「ニカブ」の公共の場での着用禁止を決定し、2011年春から禁止措置を実施した。