ブラジルのルセフ大統領が失職  弾劾裁判で罷免決まる

ルセフ大統領(31日)

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ルセフ大統領(31日)

ブラジル議会上院は31日、弾劾裁判でルセフ大統領の罷免を決めた。ルセフ氏に対しては、政府会計を不正操作したとの疑いがかけられていた。

これにより、ルラ前大統領から13年に及んだ左翼労働党の政権に幕が下りる。ルセフ氏は不正をした事実はないと主張している。

定員81人の上院で、61人の議員がルセフ氏罷免を支持し、20人が反対。罷免に必要な3分の2以上の賛成を得た。

ルセフ氏停職を受けて暫定大統領となっていたテメル副大統領が正式に大統領に就任し、ルセフ氏の本来の任期が終わる2019年1月1日まで務める。

テメル氏は中道右派のブラジル民主運動党(PMDB)を率いる。

上院での採決後、最初の閣議を開いたテメル氏は、同氏の大統領就任は「新たな時代」の始まりだと述べた。

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ルセフ氏の罷免が決まった後、大統領就任の宣誓に臨むため議会に到着したテメル氏(31日)

テメル氏は閣僚たちに、ルセフ氏の罷免はクーデターに相当するという非難から政府を「強力に擁護」するよう求めた。テレビ中継された閣議でテメル氏は、「非難はひとつたりとも放置できない」と語った。

テメル氏はさらに閣僚に、ブラジル経済再生のため議会と緊密に協力するよう求めた。テメル氏は来週、中国・杭州で開かれる主要20カ国(G20)に出席する。

左翼政党が政権を握るベネズエラとボリビア、エクアドルの南米3カ国は31日、ルセフ氏罷免を受けて、ブラジル政府を批判した。ベネズエラとブラジルは、それぞれの大使を本国に召還。ブラジルはボリビアとエクアドルからも大使を召還した。

「またすぐ会いましょう」

ルセフ氏は罷免されたものの、8年間の公職停止案は否決された。

ルセフ大統領は罷免決定を今後も争うと約束し、「私はさようならとは言わない。『またすぐ会いましょう』と言ってよいと確信している」と支持者たちに語った。

さらに、「彼らは無実の人間を断罪し、議会クーデターを実行した」と付け加えた。

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テメル氏への抗議デモに参加したルセフ氏の支持者(30日、ブラジリア)

首都ブラジリアなど各地で、テメル氏に抗議するデモが行われた。

ルセフ氏は今年5月に上院が弾劾裁判の開始を決めたことを受けて、停職となっていた。

同氏に対しては、14年10月の大統領選を有利に進めるため、社会保障関連予算を不正執行しブラジルの予算法に違反した疑いがかけられている。

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ルセフ氏が8年間公職に就くのを禁じる案は上院で否決された

ルセフ氏は、自分が再選されてからというもの、右派の対立勢力は自分を追い落とそうとしていたと批判し、自分が罷免されたのは大々的な汚職捜査を許可したからだと主張した。汚職捜査の結果、多くの有力政治家たちが起訴された。

しかし、罷免支持の上院議員らは、汚職にまみれていて政府を去るべきなのはルセフ氏と労働党だと反論していた。

テメル氏は、過去四半世紀で最長かつ最悪の景気後退に見舞われているブラジル経済の立て直しを約束している。一方で批判勢力は、労働党による人気の福祉政策の多くをテメル政権が撤廃しようとしていると警告した。