北朝鮮、核実験実施を発表 韓国は「過去最大」と

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北朝鮮北東部の豊渓里(プンゲリ)核実験施設付近で9日朝、マグニチュード(M)5.3の強い揺れが観測された。北朝鮮は日本時間午後1時半ごろから、国営朝鮮中央放送で核弾頭の爆発実験に成功したと発表した。
北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、核兵器研究所の声明として、「北部の核実験場で核弾頭の威力を判定するため、核爆発実験を行い、成功した」と発表した。

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朝鮮中央テレビの映像を見る韓国の人たち
これに先立ち韓国統合参謀本部は、「北朝鮮が過去最大の核実験を実施したと推測する」と声明を発表した。聯合通信が伝えた。声明によると、爆発の規模は10キロトンで、今年1月の核実験の2倍近く。20キロトン以上ではないかという専門家の意見もある。広島に投下された原爆の威力は、約15キロトンだった。
今回の核実験についても、規模や手法が、第三者によって確認されるまでには時間がかかる。日本政府は放射線量計測のため、大気中のちりを収集する装置を搭載した自衛隊機を複数派遣した発表した。また中国も、北朝鮮国境付近で放射線量の変化を監視していると明らかにした。
韓国の朴槿恵大統領は、訪問先のラオスで、金正恩朝鮮労働党委員長の「狂った無謀ぶり」を示す「自滅行為だ」と批判。帰国予定を数時間早めることになった大統領は、5度目の核実験で「金正恩政権の制裁が増え、北朝鮮の孤立が増すばかりだ」、「このような挑発は、自滅への道をさらに加速化させる」と述べた。
中国外交部は、核実験に断固反対すると表明し、事態悪化につながる行動を避けるよう北朝鮮に呼びかけた。
米ホワイトハウスのアーネスト大統領報道官は、オバマ大統領が「アジアと世界各地の同盟国の安全について、米国は絶え間なく取り組んでいくとあらためて伝えた」と発表。
「大統領は今後、北朝鮮の挑発行動が確実に重大な結果につながるよう、同盟国や友好国と協議を続けていくと述べた」という。

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日本の気象庁は記者会見し、通常の地震の波形とは異なるため「自然の地震ではない可能性がある」と発表(9日)
日本の安倍晋三首相は午前11時前、首相官邸で記者団に対し、「もし北朝鮮が核実験を強行したのであれば断じて許容できない。強く抗議しなければならないと思っている」と述べ、米韓中露などとの対応連携の重要性を強調した。
日本の菅義偉官房長官は午前10時すぎから臨時で記者会見し、「気象庁が、北朝鮮付近を震源とする自然地震ではない可能性のある地震波を観測した。本件地震は過去の事例などを踏まえると、北朝鮮の核実験の実施に伴い発生した可能性があると考えている」と述べた。
官房長官は昼にも官邸で記者会見し、「通常とは異なる地震波の観測とこれまでの情報を総合的に勘案した結果、本日、北朝鮮が核実験を実施したものと判断される」と語った。
9月9日は北朝鮮の建国記念日。北朝鮮は、こうした記念日に合わせて軍事力を誇示することが多い。最新の衛星映像や諜報活動から、プンゲリ付近でこのところ活動活発化の兆候がみられていたため、5回目の核実験が近く実施されるとの見方が強まっていた。
北朝鮮北東部の豊渓里(プンゲリ)核実験施設(資料写真)

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北朝鮮北東部の豊渓里(プンゲリ)核実験施設(資料写真)。この付近で9日朝、強い揺れが観測された。
国連は、北朝鮮の核実験やミサイル実験を禁止している。しかし北朝鮮は今年に入りミサイル発射実験など重ね、敵対国を核攻撃すると脅迫を繰り返している。
国連などは制裁措置を強化しているが、核保有国を目指す北朝鮮政府の決意は揺らいでいない様子だ。
BBCのスティーブン・エバンズ韓国特派員は、米中間の緊張悪化が、関係各国の連携を困難にしていると話す。
中国は友好国・北朝鮮の核実験・ミサイル発射実験に抗議を繰り返しているものの、朝鮮半島の不安定化につながる対応は敬遠している。
<北朝鮮と核兵器>
2002年10月 秘密の核兵器開発計画の存在を初めて認める
2003年1月 核拡散防止条約(NPT)から2度目の脱退宣言(1度目は1993年)
2006年10月 プンゲリの核実験施設で初の核実験を行ったと発表
2009年5月 核開発に関する6者協議から離脱表明した1カ月後、2度目の地下核実験を実施
2013年2月 3度目の核実験実施。国営メディアは「小型化かつ軽量化」した核弾頭を使用したと伝えた
2016年8月 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星1号」(KN-11)を発射し、日本海に落下させた

<分析>スティーブン・エバンズ、BBCニュース、ソウル
核実験だったと確認されれば、どう対応できるかが大きな問題だ。4回目の核実験と(敵対する各国はミサイル発射実験だと批判した)衛星打ち上げを機に、制裁措置はすでに強化されている。
北朝鮮非難の国際世論に中国も加わったが、米中関係には亀裂が走っている。韓国に米国のミサイル防衛システムを配備する計画に中国は反発しているし、南シナ海や東シナ海での領有権争いで米国に批判されて怒っている。
東アジア地域で、中国と米国がたがいにぶつかりあう事態が増えているのだ。