ロシアのハッカー集団、リオ金メダリストらの投薬情報をリーク

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ハッカーによって流出した医療記録には米国のシモーン・バイルス選手のものも含まれている(写真はリオ五輪でのバイルス選手)
世界反ドーピング機関(WADA)は13日、ロシアのハッカー集団によってリオデジャネイロ五輪の金メダリストを含む選手らの医療記録が盗まれたとして、非難する声明を出した。
リークされた医療記録には、リオ五輪の体操女子で4個の金メダルを獲得した米国のシモーン・バイルス選手や女子テニスのビーナス、セリーナ・ウイリアムズ姉妹のものが含まれるという。
「ファンシー・ベアーズ」と名乗るハッカー集団が、WADAのデータベースをハッキングしたことを認めた。
情報リークを受けて、バイルス選手は注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療薬を長年服用してきたと明らかにした。
ファンシー・ベアーズは、バイルス選手が「違法な精神刺激剤」を摂取していると糾弾したが、バイルス選手は「常に規則にのっとってきた」と反論した。
バイルス選手は文書で、WADAの禁止薬物リストに含まれる薬を服用するにあたって、必要な許可を得ていたと説明した。
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バイルス選手はツイッターで、「私はADHDを患っていて、子どものころからそのための薬を飲んできました。クリーンなスポーツを信奉していて、いつも規則に従ってきたし、フェアプレーはスポーツにとって不可欠で、私にとってもとても大切だからこれからもそうするということは分かってほしい」とコメントした
WADAは声明で、ハッキングは世界的な反ドーピング制度を損なおうとする行為だと非難した。
ロシア・メディアによると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、大統領府やシークレット・サービスがハッキングに関与していたなど「ありえない」と述べた。
選手たちが治療に必要だと確認済みの薬は、「治療使用特例(TUE)」として使用が許可される。ハッカーらは、この内容を入手した。
米国体操協会は、「TUEにもとづき、バイルス選手は薬物検査規則に違反したことはない。リオ・オリンピックもこれに含まれる」と述べた。
ハッカー集団はTUEが「ドーピング免許状」になっているとしている。
「信頼を損なう」
ロシア陸上チームは、国ぐるみのドーピング疑惑のためリオ五輪への参加が許されなかった。現在開催中のパラリンピックでは、ロシア選手団全員が出場を禁じられた。
WADAのオリビエ・ニグリ事務総長は、「このような犯罪行為は、反ドーピングにおける国際社会のロシアへの信頼を取り戻す努力を大きく損なうと、はっきりさせておかなくてはならない」と語った。
米国反ドーピング機関(USADA)のトップ、トラビス・タイガート氏は、ハッキングを「臆病で卑劣だ」と批判した。タイガート氏は、「それぞれのケースで、必要な治療薬を服用する許可の取得に関する世界的な規則を守る上で選手たちは何も間違ったことをしていない」と述べた。
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セリーナ・ウィリアムズ選手は五輪でこれまでに金メダル4個を獲得している
米国オリンピック委員会の広報担当者、パトリック・サンダスキー氏は、リオ五輪に関する情報で、反ドーピング当局が定めた医療ガイドラインに違反するような内容は全く見つからなかった」と語った。
ニグリ氏は今月、WADAに対するロシアからのハッキング攻撃がほぼ毎日のように起きていると述べていた。
「ツァーリ・チーム(APT28)」との名前でも知られるファンシー・ベアーズは、今後も各国の五輪選手団に関する機密情報をリークすると表明している。
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