シリア人道援助の車列攻撃で12人死亡 米政府が非難

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アレッポ西部に人道援助物資を運ぼうとしていたトラック31台(19日)
シリア・アレッポの西部に人道援助物資を運ぼうとしていたトラックの車列が19日、攻撃され、12人が死亡した。国連が確認し、米政府は強く非難した。
シリア軍が7日間の「平穏状態」終了を宣言した数時間後に、アレッポをはじめとする都市への空爆が再開されたという。シリア軍と反政府勢力はいずれも、相手が合意を破ったと非難しあっている。
国連報道官は、アレッポ西のウルム・アルクブラ町の近くで、7万8000人分の援助物資を運ぶ輸送トラック31台のうち、少なくとも18台が攻撃されたと明らかにした。
国連人道問題担当事務次長スティーブン・オブライエン氏は、「冷酷な攻撃」が意図的なものと確認されれば、それは戦争犯罪に相当すると非難した。
シリア政府は、人道物資輸送トラックに対する空爆を認めていない。
米国務省のカービー報道官は、ロシア政府との「今後の協力関係」を見直す必要があると述べ、「この車列の行先を、シリア政府もロシア政府も承知していた。にもかかわらず、シリアの人たちに支援物資を運ぼうとしていた援助スタッフは殺されてしまった」と批判した。
国連のスタファン・デミストゥラ・シリア担当特使はロイター通信に対して、「とんでもないことだ」とコメント。「トラックの車列は、孤立した民間人支援のため、長時間をかけて許可や準備を調整してやっと実現したものだった」と怒りをあらわにした。
シリア赤新月社によると、トラックの車列はアレッポから郊外の反政府勢力地域に物資を運ぶ定期便だった。ウルム・アルクブラ村の赤新月社施設に停車中だったという。インターネットには、トラックやトレーラーが炎に包まれた画像が投稿されている。
目撃者はロイター通信に対して、約5発のミサイルがトラックの車列を直撃したと電話で伝えた。
ロンドンを拠点とするNGO「シリア人権監視団」は、シリアかロシアの戦闘機がアレッポとアレッポ西の村を空爆し、人道支援活動家やトラック運転手など12人が死亡したと指摘している。
アレッポ市内にいるAFP通信の特派員は、アレッポ西部のスッカリ地区とアミリヤ地区で砲撃と空爆があったと伝えている。さらに、ホムスやハマ、イドリブなどの都市部で、政権側による空爆があったとの情報もある。
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赤新月社のスタッフも犠牲になったといわれている。写真はアレッポ西部に向けて出発する車列(19日)
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破壊されたアレッポの様子(18日)
ロシア政府と共に戦闘行為停止の合意を仲介した米政府は、停戦延長に取り組みつつ、シリア政府の意向を説明するようロシアに求めていると表明した。
米国務省のカービー報道官は、「シリア政権による合意内容順守を保証するのはロシアの責任なので、ロシア政府による説明を期待している」と話した。
ケリー米国務長官は、シリアによる停戦終了宣言を批判し、「最初にマスコミに話すのではなく、実際に交渉している当事者と先に話してくれると助かるのだが」と不快感を示した。
国務省によると、米ロは20日にもニューヨークでシリア情勢を協議する。
しかし米政府高官は匿名で、シリア停戦実現のための米ロ交渉を「救えるのかどうか、分からない。現時点でロシア側は、(停戦実現について)真剣だと速やかに態度で示さなくてはならない。さもなければ何も延長できないし、何も救いようがない」と否定的な見解を示した。
米ロが12日に仲介した戦闘停止合意において、包囲地域に人道支援物資をいかに届けるかは重要な要素だった。
赤十字によると、シリア西部ホムスで包囲されているタルビセ町には19日、援助物資が届いたが、ほかにも孤立した複数地域に物資が届けられずにいる。
17日には、いわゆる「イスラム国」(IS)掃討のための米国主導有志連合の戦闘機が、東部デリゾールでシリア軍を爆撃したため、戦闘停止の合意は大きく揺らぐこととなった。爆撃は誤爆だったとみられている。
この攻撃によってシリア兵士60人以上が死亡し、アサド大統領は「アメリカはまたしてもテロ組織ダーエシュ(IS)のために、シリア軍をあからさまに攻撃した」と非難していた。