大型ハリケーン「マシュー」でハイチの死者300人超に

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キューバ北西から米フロリダ州に向かうハリケーン「マシュー」の衛星画像(6日、米海洋大気庁提供)
過去10年近くで最大級の大型ハリケーン「マシュー」に直撃された中米ハイチの政府関係者は6日、死者数が300人を超えたと明らかにした。東隣のドミニカ共和国でも4日に4人が死亡した。「マシュー」は米東部時間7日早朝現在、カテゴリー3(5段階中3番目の強さ)に分類される勢力で、米フロリダ州の東岸沖を北上している。
米国立ハリケーンセンターによると、フロリダ州において118年以来最大のハリケーンになる可能性がある。米東部時間7日午前6時(日本時間同日午後7時)の時点で、「マシュー」は東岸ポート・カナベラルから約40キロ東の沖合を時速14キロで北上している。
フロリダ州では22万人が電気のない状態にあるという。オバマ大統領は5日、フロリダ州とサウスカロライナ州に非常事態宣言を発令。米国内ではすでに200万人以上が避難している。米国にカテゴリー4のハリケーンが上陸するのは、2004年のハリケーン「チャーリー」以来。当時は南部州に140億ドル相当の損害が出た。
フロリダ州のリック・スコット知事は「言い訳はなしだ。退去しないとだめだ」と強調。「避難したくないなら、これまでにこの嵐でどれほどの人が亡くなったか考えてもらいたい。真剣に受け止めないと、自分や自分の家族がそこに加わるかもしれない」と住民に避難を強く促した。
州内各地では、給油所に車の行列ができ、住民は食料や、家を補強するための材料を買い込んでいるという。一部地区では学校や大学は休校し、行政事務所も業務を一時停止。マイアミ国際空港の到着便は6日午前までに約9割がキャンセルされた。ディズニーワールド、ユニバーサル・スタジオ、シーワールドなどの観光施設も休園となった。

ハリケーン「マシュー」の予想進路(米海洋大気庁資料より)
ハイチでの被害については、エルベ・フルカン上院議員がAFP通信に対して、300人以上が死亡したと話した。ロイター通信は、匿名の政府当局者の話として、339人が死亡したと伝えた。
ハイチでは南部ロシュアバトーの町だけで約50人が死亡。主要都市ジェレミーでは建物の8割が倒壊した。南県では住宅3万戸が破壊された。死亡した人のほとんどは南岸の町や漁村の住民で、暴風雨で倒れた木や飛ばされてきた物、増水した川などの犠牲になった。6日の時点では死者は100人余りと発表されていたが、冠水が引き、救援が現地に到着するにつれて、発見される死者の数が増えてきた。
大型ハリケーン「マシュー」でハイチに甚大な被害
「マシュー」は南西部ティブロン半島を直撃し、3日から4日にかけて風速約64メートル(時速230キロ)を記録。プティ・ゴアブで主要な橋が4日に崩壊したため、南西部の大半が孤立した。複数の非政府組織(NGO)によると、電話や電気が使えず、食料は水が底をつきはじめているという。
現地で取材するBBCのトニー・ブラウン記者は、住民が自分たちでがれきを取り除こうとしているが、軍や警察の支援はまだないと話す。
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ハイチ全土で35万人が支援を必要としている。
米赤十字のスージー・デフランシス報道官は、電話の復旧が最優先だと述べ、そのための技術支援を行うと話した。「配布予定の支援物資を倉庫に用意してある。調理用の器具や衛生用の道具も必要だ。特にコレラの発生を心配しているので、水の浄化剤の配布を手伝う」。
米政府は最も被害の大きい地域に水や食料を運ぶため、軍のヘリコプターを9機派遣した。
ハイチは世界でも特に貧しい国のひとつで、国連人間開発指数では188カ国中163位。2010年の地震で大統領府などが崩壊して以来、政府機能が不十分な状態が続き、防災対策はほとんどとられていない。住民の多くは災害多発地域に建てられた、壊れやすい住宅での生活を余儀なくされている。2010年の地震の後には、国連救援部隊の到着をきっかけにコレラが発生し、数千人が死亡した。大規模な森林伐採によって土壌はやせ細り、不安定な地盤に建てられた建物はただでさえもろい状態にある。

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ジェレミーの町ではほとんどの建物が破壊された

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壊れた自宅を自ら修復するレ・カイエの人たち

プティ・ゴアブ橋が4日に崩壊したため、南西部の一部が孤立している

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浸水したハイチ・レカイエの市街地

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「マシュー」はハイチに続きキューバを直撃。写真はキューバ・グアンタナモのカルボネラ地区で破壊された建物と住民の子供たち(5日)

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フロリダ州シンガー島に打ち寄せる高波