ノーベル文学賞はボブ・ディランさん 各界から祝福の声

ボブ・ディランさん(2012年撮影)

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ボブ・ディランさん(2012年撮影)

スウェーデン・アカデミーは13日、ノーベル文学賞を米国の歌手ボブ・ディランさん(75)に授与すると発表した。歌手が同賞を受賞するのは初めて。

スウェーデン・アカデミーは、ディランさんを「偉大なアメリカ歌謡の伝統の中で新たな詩的表現を創造した」と評価した。

米国人の同文学賞受賞は、1993年に受賞した小説家トニー・モリソンさん以来。オバマ米大統領はディランさんの受賞は「全くふさわしい」と歓迎し、ツイッターで「私が一番好きな詩人のひとりに、おめでとうと言いたい」とコメントした。

スウェーデン・アカデミーのサラ・ダニウス事務局長はストックホルムで記者団に対し、ディランさんは「英語圏の(文学的)伝統につながる偉大な詩人だ」と述べた。同氏はディランさんが「54年間にわたって、新しい境地を開き続けており、常に新しいアイデンティティを創造してきた」と語った。

ディランさんは13日夜に米ラスベガスのコズモポリタン・ホテルで演奏する予定。

「ボブ・ディラン」は芸名で、英ウェールズ地方出身の詩人ディラン・トマスにちなんだもの。

ディランさんの受賞の可能性は以前から憶測されてきたが、スウェーデン・アカデミーが文学賞の対象をフォークやロック音楽にまで広げると予想していた専門家は少ない。

1999年から2009年まで英国の桂冠詩人だったアンドリュー・モーションさんはこれまでもディランさんの曲の歌詞を称賛し、「詩になっている」と述べていた。モーションさんはBBCに対し、「最も良い言葉が最も良い順序で配置されている」と語った。

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ディランさんは後進に大きな影響を与えたが、議論を呼ぶこともあった(写真は1969年撮影)

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ディラン氏は2012年にオバマ大統領によって「大統領自由勲章」を授与された

ディランさんは1941年にミネソタ州で生まれた。本名はロバート・アレン・ジマーマン。地元で歌手活動を始め、その後ニューヨークに移り住んだ。

代表作の多くは1960年代に発表された。さまざまな問題に直面していた当時の米国を歌い、時代の記録者となった。

「風に吹かれて」や「時代は変る」などの作品は、反戦運動や公民権運動を象徴する歌となった。

伝統的なフォークソングを超えた作曲活動や、議論の的ともなったエレキギターの使用は共に、後進のミュージシャンたちに大きな影響を与えた。

アルバム作品には、「追憶のハイウェイ61」(1965年)や「ブロンド・オン・ブロンド」(1966年)、「血の轍(わだち)」(1975年)などがある。

1980年代後半からは頻繁にコンサートツアーを行っており、「終わらぬ旅」と表現する人もいる。

ツイッターでは、多くの人が受賞に関するコメントを出している。

バンド「トラヴェリング・ウィルベリーズ」でディランさんと共演したこともある元ビートルズ・メンバー、故ジョージ・ハリソンさんの遺産管財団が歓迎のコメントをツイート。

バンド「シンプリー・レッド」のボーカル、ミック・ハックネルさんは、ディランさんを「生存する最も偉大な詩人」と称賛。ユーリズミックスのデイブ・スチュワートさんは、「とってもいいね」とツイートした。

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デイブ・スチュアートさんのツイート

作家サルマン・ラシュディさんは、「オルフェウスからファイズまで、歌と詩は深い関係にあった。ボブ・ディランは吟遊詩人の伝統の素晴らしい継承者だ」とツイートした。

しかし、小説「トレインスポッティング」などの作家アービン・ウェルシュさんは不快感を示し、「ボブ・ディランのファンだが、これは、ボケて支離滅裂の年寄りヒッピーたちの臭い前立腺からもぎ取られた、ノスタルジー優先の良くない受賞だ」とツイートした。

米国の小説家ジョディ・ピコ―さんも、ディランさんの受賞に複雑な感情を表し、「良いこと」だとしながらも、ハッシュタグ「#ButDoesThisMeanICanWinAGrammy?(だけど、それなら私はグラミー賞もらえるってこと?)」を付け加えた。

文学賞を含む6分野のノーベル賞の授与式は、1896年に没した賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日の12月10日に開かれる。

ノーベル文学賞が発表された13日は、1997年に同賞を受賞したイタリアの脚本家ダリオ・フォさんの死去が発表された日と重なった。