ISはモスルで「人間の盾」使用=米政府

イラク軍とISとの戦闘激化に伴い避難するモスル近郊の住民(18日)

画像提供, AP

画像説明,

イラク軍とISとの戦闘激化に伴い避難するモスル近郊の住民(18日)

米政府は18日、過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)がイラク主要都市モスル奪還のため進攻するイラク軍に対し、市民を「人間の盾」として使っていると非難した。

国防総省報道官のジェフ・デイビス海軍大佐は報道陣の質問に答え、ISは「確実に」市民を「人間の盾」として使っていると述べた。

「(市民は)意に反して市内に足止めされている。昨日の段階で、市民が脱出する姿を見ていない」とデイビス大佐は話した。

北部イラクの主要都市モスルでは、市民70万人が残っており、IS戦闘員約5000人がイラク軍など連合部隊の進攻を待ち受けているとみられる。イラク政府軍はモスル南郊から北進し、クルド人部隊は東側から進攻している。

ロイター通信が電話取材した住民たちによると、ISは市民の脱出を食い止めている。空爆の標的になる可能性の高い建物に入るよう命じられた人たちもいるという。

米国が主導する有志連合は、周辺の10の村からISを掃討したと説明している。

バラク・オバマ米大統領は、モスル周辺から民間人が大量に移動して人道危機が発生するのではという同盟国の懸念に対して、「計画とインフラ」がすでに用意してあると述べた。

イラク担当の国連人道調整官リーズ・グランデ氏は、モスル奪還作戦の開始当初から数週間の間に、最多20万人が避難場所を必要とするだろうという前提で、国連は対応にあたっていると話した。

欧州連合(EU)は、モスルで戦うイスラム教聖戦主義者の多くがEU加盟国の国民なだけに、モスルから脱出するIS戦闘員が欧州に戻り、治安上の脅威となることに懸念を示している。

画像説明,

モスルへ進軍するイラク軍とクルド人部隊の位置(17日現在)

イラク政府軍とクルド人部隊は、モスル市の30~40キロ手前の地点にいる。イラク地上部隊のリアド・ジャラル・タウフィーク司令官によると、東部カラコシュのIS狙撃手たちが進攻を食い止めているという。

画像提供, AFP

画像説明,

カラコシュ解放の知らせを祝う、キリスト教徒イラク人の子供たち(18日、イラク・イルビル)

司令官によるとカラコシュの町はまだ奪還できていないが、先に「カラコシュ解放」との知らせが伝えられると、イルビルに避難していたキリスト教徒のイラク人たちは歓喜した。

モスルから32キロ離れたカラコシュは、イラク国内で最もキリスト教徒の多い町だった。

ISは場所によって激しく抵抗している様子で、連合軍の装甲車に発砲するISだというビデオを公表した。

連合軍は19日にも進攻を再開する予定。奪還作戦にはイラク兵3万4000人とクルド人部隊、イスラム教スンニ派のアラブ人戦闘員、イスラム教シーア派民兵などが参加している。