イラクのクルド人部隊、モスルに「大攻勢」

モスル近くの村に砲撃するイラク軍

画像提供, AFP

画像説明,

モスル近くの村に砲撃するイラク軍

イラク北部の主要都市モスルから過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)を掃討する作戦に参加しているクルド人部隊は、モスルの東と北から大攻勢を開始したと明らかにした。この間、イラク軍は南からモスルに向かっている。

クルド人自治政府の治安部隊ペシュメルガは、自分たちは3つの前線で戦っていると明らかにし、「ISIL(ISの別称)の行動をさらに制限するため、近隣の村からISを掃討し戦略的な地域を掌握することが目的」だと説明した。

ペシュメルガに同行しているBBCのオルラ・ゲリン記者は、「20の村奪還」が目的だとツイートした

画像提供, Twitter

画像説明,

BBCのオルラ・ゲリン記者が「クルド・ペシュメルガ部隊がモスル付近のIS拠点へ進攻開始。20の村奪還が目的」とツイート

これに先立ち、米軍第101空挺師団のギャリー・ボレスキー司令官は「モスルを出ていく様子が見える。指導者たちがモスルを出た様子だ」と発言。ただし、モスルを脱出した人物や行先は特定していない。ボレスキー少将は、ISと戦う米軍主導の有志連合の地上部隊を指揮している。

ISのアブ・バクル・アル・バグダディ指導者の居場所は不明。モスルにいるという情報もあるが、すでに脱出したという情報もある。

モスルにはまだIS戦闘員5000人が残っているとみられている。

画像説明,

モスルへ進軍するイラク軍とクルド人部隊の位置(19日現在)

BBCの中東アナリスト、アラン・ジョンストン記者は、モスルを出た戦闘員は単に前線に向かっただけかもしれないと指摘。ISに忠誠を誓う戦闘員は市内に残り、最後まで戦うはずだと記者は見解を示している。

米軍のボレスキー少将は、市内で最後まで戦う大半は、外国から来たIS戦闘員だろうとみている。

画像提供, AFP

画像説明,

黒煙が立ち上るカイヤラ地区でライフルを掲げるイラク兵。カイヤラはモスルから約30キロ南。

国際慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」によると、過去10日の間に戦闘地域から5000人が国境を越えてシリア領内の難民キャンプに避難。さらに1000人が国境で待機しているという。

モスルの南部、東部、北部で、難民キャンプが急きょ設置されている。国連は、今後少なくとも20万人が避難するだろうとみている。

最大150万人の市民がモスル市内にいるとされる。ISが市民の脱出を阻止しており、生活必需品が底をつきかけているという情報もある。

画像提供, Stratfor, AllSource Analysis, Digital Globe

画像説明,

この衛星画像ではモスルに至る道路でタイヤが燃える様子が見える

モスルはイラク第2の都市で、2014年6月からISに支配されていた。イラク政府軍などによる奪還作戦は17日に始まったが、ISは随所で激しく抗戦している模様。ISが「人間の盾」や化学兵器を使う危険性も指摘されている。