トルコ軍とクルド人部隊、イラク・モスル近くでIS攻撃

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モスル近郊の戦闘から避難する住民(22日)
トルコ軍とクルド人自治政府の治安部隊ペシュメルガは23日、イラク北部で過激派組織「イスラム国」(IS)が支配する要衝モスル奪還に向けた戦闘で、モスル近くにある町バシカを攻撃した。
ペシュメルガの司令官らによると、部隊はIS支配地域内に深く進攻し、ISの動きを制限できる高速道路を掌握したという。
23日にバシカを砲撃したトルコ軍は、クルド人部隊から支援の要請を受けて攻撃を実施したと述べた。
一方、イラクのハイデル・アバディ首相は22日、トルコの支援の申し入れを拒否している。
ペシュメルガが奪還しようとしているバシカ町の近くでは、爆発の様子が撮影された
クルド人部隊は数十人のIS戦闘員を殺害し、8つの村を立ち入り禁止にしたほか、ISがモスルに援軍を送り込む道を封鎖した。
在イラク米軍のトップ、スティーブン・タウンゼンド中将は記者らに対し、23日のバシカ攻撃は「かなりの成功だった」と述べた。
しかし、タウンゼンド中将は同時に、「全住居の捜索が終わっておらず、すべてのダーイシュ(ISの別称)が殺されていないし、すべてのIED(手製爆弾)も除去されていない」と警告した。
報道陣はバシカに入ることが依然として許可されていない。
ロイター通信が23日に近くの村から撮影した映像には、クルド人部隊が迫撃砲や機関銃で攻撃するなか、バシカから煙が上がっている様子が映っている。
有志連合軍による攻勢で、ISはモスル周辺で後退を続けている。ペシュメルガの司令官らはモスルから9キロ以内の地点まで進んだと語った。
モスル(Mosul)やキルクーク(Kirkuk)はイラク北部に位置する
トルコの役割は?
トルコは、ISからのモスル奪還に向けた攻撃で自国軍が何もせず静観するわけにはいかないという立場だ。
トルコのビナリ・ユルドゥルム首相はテレビ放送で、「バシカ地域からダーイシュを排除するため、ペシュメルガが動員されている。彼らはバシカ基地のわが軍兵士の助けを求めた。そのため、我々は迫撃砲で戦車を支援している」と述べた。
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トルコの首都アンカラで演説するユルドゥルム首相(今月18日)
バシカ近くの基地では、アラブ人とクルド人両方が含まれるイスラム教スンニ派の戦闘員をトルコ軍が訓練している。
アッシュ・カーター米国防長官は21日にモスル攻撃でトルコが果たせる役割があると示唆したものの、イラクのアバディ首相はこれに反発。トルコ軍の助けを借りる状況にはまだないとしていた。
アンバル州で何が起きたか
ISは西部アンバル州のルトバを攻撃。モスルへの攻勢から注意をそぐためとみられる。
イラク軍のスポークスマンは、ルトバで自爆犯による自動車爆弾攻撃が3件あったが、事態は収まっていると述べた。ルトバ市長は、ISの工作員が市内に潜伏していたと語った。
2014年からIS支配下にあったルトバは、4カ月前にISから奪還された。
モスルの周囲で対IS包囲網が強まるなか、ISはイラクの別地域で自爆攻撃を行うなどして対抗している。
ISは21日にモスルの南東に位置するキルクークに攻撃を仕掛け、少なくとも46人が死亡し、多数が負傷した。キルクークでは夜間外出禁止令が出ており、23日にも散発的な戦闘がみられたと報じられている。
米国の反応
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バクダッドで記者会見するカーター米国防長官(22日)
クルド人自治政府の要人らと会談するためイラク北部のエルビルを訪問中のカーター米国防長官は、ペシュメルガを称賛し、「戦闘が非常に上手だ。しかし、激しく戦っているため、大変な思いもしていて、死傷者が出ている」と述べた。
AP通信によると、カーター長官は、イラクから要請があればさらに支援を強化するとし、同時にシリアでISが支配する要衝ラッカで軍事作戦を計画していると語った。
カーター長官は、ラッカでの対IS軍事作戦をできるだけ早く実行に移したいと述べた。
米国が主導する有志連合は、軍機や軍事顧問などの派遣でモスル奪還に向けた攻撃を支援している。
イラク治安部隊やクルド人のペシュメルガ、スンニ、シーア両派のアラブ人民兵約3万人がモスル攻撃に参加している。
民間人への影響は?
国連は、モスル周辺の戦闘でこれまでに5000人が住まいを追われたと発表。今後数週間でさらに20万人が難民化すると予想している。
21日に戦闘員たちが放火した硫黄工場からの有害な煙によって、最大1000人が病院で手当てを受けた。
支援団体は、戦闘が続けば最大100万人が難民化すると予想する。国連は約70万人の避難所が必要になるとみている。