【米大統領選2016】クリントン陣営、FBI長官の「ダブルスタンダード」批判

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コーミーFBI長官とクリントン氏
米大統領選の投開票日11月8日を目前に、民主党候補ヒラリー・クリントン氏の陣営は、私用サーバー問題に関する連邦捜査局(FBI)の態度は「ダブルスタンダード」だと強く非難している。
ジェイムズ・コーミーFBI長官は大統領選の投開票日を11日後に控えた10月28日夜に、クリントン氏の公務長官時代のメール問題に関連するかもしれない他のメールを調べていると公表した。これについて、クリントン陣営をはじめ複数の民主党関係者がコーミー長官を強く批判。民主党のハリー・リード上院院内総務は公開書簡で、長官の行為は法律違反で、そればかりか「ドナルド・トランプと上級顧問たちとロシア政府の密接な関係に関する衝撃情報」を公表していないではないかと批判した。
さらに複数の米メディアは、民主党のメールサーバーをロシアがハッキングしたとされる問題で、ロシアが米大統領選に介入しようとしていると明確に批判するのは控えるべきだと進言していたと伝えている。報道によると、コーミー長官は大統領選当日に近すぎるため情報開示を控えるべきだという立場だったという。
FBIはBBCの取材に回答を拒否した。
報道によると、コーミー長官が公表を了承しなかったロシアに関する報告は、国家安全保障省と国家情報長官事務所が10月7日に政府内で提出したもの。報告書は「米国の情報機関は、米国の政治組織を含む米国の個人や組織のメールの安全が最近破られたのは、ロシア政府の指導によるものだと確信している。(中略)一連の情報盗難と漏洩は、米国の選挙プロセスに介入することを目的としている」という内容だったとされる。
コーミー長官はこの内容に同意しつつも、大統領選前に公表することには反対していたと米メディアは伝えている。
ロシアのハッカーたちが、大統領選を共和党候補ドナルド・トランプ氏に有利にするため、民主党をねらったという指摘はこれまでも繰り返されてきた。
クリントン陣営のロビー・ムック選対本部長は、「あからさまなダブル・スタンダードだという以外のなにものでもない」と批判し、コーミー長官に「この矛盾を直ちに説明し、ヒラリー・クリントンの関係者に適用したと同じ基準をドナルド・トランプの関係者にも適用するよう」呼びかけた。

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トランプ氏は「ヒラリーが法律問題に悩まされているのは本人のせいだ」と(31日、ミシガン州で)

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クリントン氏は「有権者はすべての事実をつまびらかにしてもらう権利がある」と(31日、シンシナティで)
クリントン氏が2009年~2013年にかけて国務長官としての公務メールを私用サーバーで扱い、連邦政府の規則を犯していたことは、2015年3月の米紙ニューヨーク・タイムズ報道で最初に明らかになった。
クリントン氏の弁護団は私用サーバーの内容を洗い出し、公務関連のメール3万通を国務省に提出したが、選対本部は内容がプライベートなものだという理由で3万3000通を削除した。
コーミー長官は今年7月、クリントン氏が機密情報の扱いにおいて「極めて不注意だった」と指摘しつつも、立件するだけの事由はないと説明していた。
しかし長官は10月28日、捜査に「関係するかもしれない」新たなメールの存在を知り、捜査を再開すると連邦議会に通達した。
新たに見つかったメールは、アンソニー・ウィーナー元下院議員が15歳少女にわいせつなメールや画像を送っていたとされる事件の捜査で浮上したもの。元議員は、クリントン氏の側近中の側近といわれるフマ・アベディン氏の別居中の夫。
FBIは、元下院議員のラップトップ内に保管されていたアベディン氏の約65万通のメールを捜査するための令状を取得したと報道されている。大量のメールは誰が送信し誰が受信したもので、どういう内容なのか、明らかになっていない。
トランプ氏は31日、FBIがクリントン氏のメールの「大金脈」を発見するはずだと発言。削除された3万3000通がそこから出てくることを期待すると述べた。
一方でクリントン氏は支援者集会で、隠し立てすることは何もないと述べた。
コーミー長官とロレッタ・リンチ司法長官は、新しいメールの捜査を速やかに進めていると発言。
ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト大統領報道官は、ホワイトハウスとしてFBIの判断を擁護も批判もしないと表明。コーミー長官が選挙結果をひそかに動かそうとしたわけではないと、大統領は考えているという。
「(コーミー氏は)高潔な人格者で、強い理念の持ち主で、大変な職務を担っている」と報道官は述べた。
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