モスル奪還目指す民兵が拷問や暴行と IS協力者に復讐

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イラク軍がモスル市内を捜索するなか白旗を掲げた市民もいた(2日)
人権団体アムネスティー・インターナショナルは2日、イラク北部の主要都市モスルを過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)から奪還を目指す民兵が、IS協力者とされた男性や少年を復讐目的で暴行していると指摘した。
アムネスティー・インターナショナルによると、民兵は男性たちを暴行したり、拷問したほか、公衆の前で辱めているという。
イラクの特殊部隊は2日、モスル東部地域でいったん進攻を止め、IS残党を捜索した。
2日は奪還作戦が始まってから17日目となった。作戦にはイラク軍のほか、クルド人自治政府の治安部隊ペシュメルガ、イスラム教スンニ派の部族兵士、シーア派の民兵が参加している。
このなかでもスンニ派の部族兵士、特にサバウィ部族の部隊が過去数週間にわたり、ISから解放された村々で復讐行為に関与していると指摘されている。
「免責の文化」
アムネスティー・インターナショナルが聴取した目撃者によると、IS同調者とされた数人は、交差点の真ん中にニワトリを入れる籠に入れて放置された。
ある戦闘員は、ひとりずつ籠から出す代わりに、「お前はなんだ? 動物だと言え、ロバだと言え」と言って嘲笑したという。
目撃者らはまた、司令官の姿が見えない戦闘員らが数十人を拘束し、ケーブルで男性の顔をひっぱたいたり、自動車のボンネットに容疑者を縛り付けて村々を走り、人々を放棄された家に閉じ込めたりしているという。拷問の跡が残る拘束者の集団をイラク軍に引き渡すのが見られたという。
アムネスティー・インターナショナルのリン・マアルフ氏は、「このような暴力を行う犯罪者に、犯罪を犯しても罰されない、意のままになる権力があると思わせる、危険な免責の文化」が生まれていると指摘した。
マアルフ氏は、「法的権限がある人のみが拘束と尋問をするべきだ。当局は部族民兵らの犯行を止めさせ、現在行われているモスル進攻で同じような犯罪が繰り返されることのないよう、彼らを裁きの場に引き出すべきだ」
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モスル東部の解放を喜ぶ市民ら(2日)
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戦闘が続くなか市民はモスクに避難した(2日)
イラク軍は奪還済みのククジャリ地区内にIS残党がいないか、地区内をくまなく捜索を行っている。
BBC特派員によると、イラク軍は、待ち伏せ攻撃や秘密トンネル、仕掛け爆弾などに注意しながら慎重に進んでいる。
イラク軍は、トンネル内戦闘でIS戦闘員6人が殺されたと明らかにした。
精鋭部隊のテロ対策部隊(CTS)は1日にモスル東部のククジャリ地区を奪還し、より建物が密集したカラマ地区に到達した。
部隊に同行するBBCのイアン・パネル記者によると、反撃した戦闘員らは殺害され、ほかの戦闘員は市の中心部により近い地域に逃げたという。
モスルには約120万人が住む。ノルウェーの非政府組織(NGO)、ノルウェー難民評議会は、戦闘によって住民の命は「深刻な危険」に直面していると警告した。
一部の住民は、モスルの東に設置された難民収容所に避難している。
CTSの幹部は2日、AP通信に対し、部隊が民家を一軒ずつ回り民間人の安全を確認しながら、援軍を待ち、市中心部への進軍に備えていると語った。
モスル市内には数千人のIS戦闘員が残っている。
2日時点で各勢力が掌握する地域(緑:イラク軍、オレンジ色:IS、紫:クルド人)