米支援のシリア反政府勢力 IS「首都」ラッカ奪還作戦を開始

ラッカ奪還作戦を発表するシリア民主軍の司令官ら(6日)

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ラッカ奪還作戦を発表するシリア民主軍の司令官ら(6日)

米国の支援を受けたシリア反政府勢力は6日、過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)が「首都」とするシリア北東部のラッカの奪還作戦を開始した。

クルド人とアラブ人の反政府勢力によって結成された「シリア民主軍」(SDF)は、ラッカから約50キロ北にあるアインイーサで記者会見を開き、作戦を発表した。SDFは米軍の空爆による援護を受ける。

SDFの広報担当者は、「ラッカと周辺地域を解放する主要な戦いが始まった」と述べた。SDFは民間人に対し、IS戦闘員がいる場所から離れるように警告した。

米主導の対IS有志連合で調整役を務めるオバマ米大統領の特使、ブレット・マクガーク氏は、「ラッカ作戦は段階的に進められる。非常に慎重に段階を踏む」と語った。

マクガーク氏は、「きょう始まったのは隔離の段階だ。ラッカから確実にダーエシュ(イスラム国の別称)を追い出すため、この後も複数の段階を重ね、成功させる」と述べた。

SDFの別の広報担当者はAFP通信に対し、ISの激しい抵抗が予想されると語った。「ラッカを失えば彼らはシリアで終わったも同然だ。それが分かっているから、ISは自分たちの大事な拠点を防御するだろう」。

隣国イラクでは、米国の支援を受けたイラク政府軍がIS主要拠点モスルの奪還を目指して戦っている。

ISは2014年にカリフ制国家の樹立を宣言し、ラッカを事実上の「首都」としていた。

アメリカの民間の調査機関、IHS紛争モニターが先月公表したデータによると、ISが掌握する地域は今年に入って約16%縮小した。2015年1月時点からは4分の1以上縮小しているという。

Interactive See how the area IS controls has changed since 2015

October 2016

January 2015

<ISの支配地域を2015年1月と今年10月で比較/図中央の矢印を動かす>

主にクルド人民兵組織「人民防衛隊」(YPG)によって構成されるシリア民主軍は、過去2年間で米主導の反IS連合における主要な同盟勢力となり、シリア北部でISとの戦闘を主導している。

シリアの北で国境を接するトルコはラッカ奪還作戦には参加しない見通し。トルコはYPGをテロ組織だと考えており、ラッカ解放でYPGの参加を受け入れない考えを表明している。

SDFは、「ユーフラテスの怒り」と名付けられたラッカ奪還作戦を発表した際、トルコが「シリアの国内問題には介入しない」とした。

一部の推計では、SDFの約3万人の戦闘員のうち、最大2万5000人がYPG出身だとみられている。

6日には、米国のジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が事前の発表がないままトルコの首都アンカラを訪れ、同国軍トップのフルシ・アカル参謀総長と会談した。

ヨルダンの首都アンマンにいるマクガーク大統領特使は、軍トップらの会談は両国政府が「緊密な連絡」を取っていることを示していると説明した。

マクガーク特使はラッカ奪還作戦について、「可能な限りよく調整されたものにしたい」とし、「現場には複数の勢力が集まっており、当然ながら、その多くは意見が異なっているが、共通の非常に危険な敵がいる」と語った。

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イラクのモスルに向かって進軍するクルド人自治政府の治安部隊ペシュメルガ(先月17日)

ラッカ奪還作戦にYPGが参加することにはトルコが反対しているものの、イラクで対IS有志連合を指揮する米軍のスティーブン・タウンゼンド中将は先週、YPGは不可欠な役割を担っていると述べた。

タウンゼンド中将は、「間違いないのは、目先、戦闘能力があるのはYPGが主要な割合を占めるシリア民主軍のみということだ」とし、「なので、我々は交渉し、計画し、トルコと協議しており、段階を踏んで進める」と語った。