仏国民戦線の党首、トランプ氏勝利で自分も有利になったと

Marine Le Pen

フランス極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペン党首は13日、BBCに出演し、ドナルド・トランプ氏が米大統領選に勝ったおかげで、自分が来年大統領になる可能性も一気に高くなったと述べた。来年春のフランス大統領選で、ル・ペン氏は5月の決選投票までたどり着くものと広くみられている。

ル・ペン党首は事前録画された映像でBBCの「アンドリュー・マー・ショウ」に出演。「かつて不可能だと言われていたことを可能にした」とトランプ氏を高く評価した。

勝利は思ったより早く実現しそうかと質問されたル・ペン氏は、「フランスでも国民がテーブルをひっくり返してほしい。今はエリートたちがこのテーブルを取り囲んで、フランス国民に行き渡るべきものを自分たちの間で分け合っている」と述べた。

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仏国民戦線ル・ペン党首、トランプ氏は「不可能を可能にした」

FNは昨年12月の地方議会選で27%以上を得票したものの、共和党と社会党が対抗勢力として協力したため、FNはすべての地方圏で敗退した。

フランスの政治アナリストたちは、大統領選でもル・ペン氏が決選投票までたどり着けば、同じことになると見ている。しかし、英国のブレグジット(欧州連合離脱)に続き、移民排斥と保護主義を掲げたトランプ氏が勝利したことで、米国だけでなく欧州の政治主流派も大いに動揺している。

ル・ペン氏は仏大統領選の展望について、「イスラム原理主義が拡大している、アングロサクソン式の多文化社会」と「国民が自分たちの運命を自分たちで決められる独立した国家」のどちらを希望するか、有権者は選ぶことになると述べ、「どの国も自国利益を守る権利があると信じる」と強調した。

移民問題について聞かれると、「これ以上は誰も歓迎しない。もう来ないように。フランスはもうパンパンだ」と強く否定。イスラム系フランス人との関係については「信仰を理由に人を判断したりしない」ものの、「私たちの行動規範や価値観、私たちフランスのライフスタイルに従おうとしない」場合は、国家は「しかるべく対応する」と述べた。

フランス国内のムスリム社会は西欧最大規模だが、過去2年の間にイスラム聖戦主義者による攻撃が国内で相次ぎ、移民に対する拒否感が高まっている。

ル・ペン氏はさらに、欧州連合(EU)が「抑圧的なモデル」だと批判。「多くの欧州人が切望する」「自由国家が集まった欧州」がいずれEUにとって代わると見通しを述べた。

クリミアを併合しシリア内戦に介入するロシアの脅威については、「怖がる理由はない」と否定。「ロシアは欧州の国だ。強力な欧州を願うなら、ロシアと交渉した方がいい」と述べた上で、プーチン露大統領は「自国利益と自国のアイデンティティーを守って」おり、その統治は「合理的な保護主義」のあるべき形だと称えた。

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フランスでは今年夏、ムスリム女性の水着「ブルキニ」を禁止すべきかどうかも議論になった

英野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、同じBBC番組で、トランプ氏とル・ペン氏がどちらもイスラム教徒など少数派に対して「ひどい、とんでもない言い方をする」と批判。「少数民族に対する大衆感情を利用して、当選しようとしている」と指摘した。

ル・ペン氏が有権者に投げかける物言いは「浅くて大衆主義的で、意地悪だ」とコービン氏は述べ、「フランスで取り残されている地域の問題に対する経済的な解決法など、実際には持っていない。イギリス独立党(UKIP)がイギリスで取り残された地域への答えを持っていないのと同じに」と批判した。

UKIP報道担当は、FNの移民政策は「特定集団への長年にわたる嫌悪」にもとづくもので、自分たちの政策はFNのものとは異なるとかねてからはっきり説明してきたと表明した。

UKIPは「移民はこの国に恩恵をもたらすと我々は考えている。ただしきちんと管理されたものであるべきで、特定の集団や人種を一切ひいきにしてはならない」と述べている。