米下院、対ロシア制裁法案を可決 制裁強化に一歩近づく

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法案はトランプ大統領が目指すロシアとの関係改善をより難しくする可能性がある
米下院は25日、ドナルド・トランプ米大統領が慎重な姿勢を示していた対ロシア制裁強化法案を可決した。
昨年の米大統領選でのロシア介入疑惑に対する報復として、ロシア政府の複数の高官が制裁の対象に加えられる。
この法案により、トランプ大統領が目指すロシアとの関係改善の試みはより難しくなる可能性が高い。
法案成立には、上院で可決された上で、大統領が署名する必要がある。
ホワイトハウスは現在、法案を精査しているとしており、大統領が拒否権を行使するかは依然として不明だ。
ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は声明で、「大統領は北朝鮮やイラン、ロシアに対する厳しい制裁を支持しているが、ホワイトハウスは下院の法案を精査しており、大統領のもとに届く最終的な法案パッケージを待っている」と述べた。
ロシア政府が米大統領選でトランプ氏を当選させようと介入したとの疑惑が続くなか、ロシアと大統領との関係は、発足から半年がたったトランプ政権にずっと付きまとってきた。
トランプ氏はまた、ロシア疑惑への捜査でジェフ・セッションズ司法長官に強い圧力をかけている。セッションズ氏について「弱い」と公然とレッテルを張り、捜査から身を引くというセッションズ氏の決断を「残念だ」と述べている。
下院は今回の措置を圧倒的多数で支持した。法案には弾道ミサイル実験を受けた、北朝鮮とイランに対する新たな制裁も盛り込まれる。
下院は法案を賛成419票、反対3票で可決。ポール・ライアン下院議長はこの法案が、「米国人の安全を守るため、我々の最も危険な敵への締め付けを強める」一連の制裁になると説明した。
ロシアへの追加制裁法案が今回まとめられたのは、2014年のロシアによるクリミア半島併合をさらに罰するためでもある。制裁により、石油や天然ガスのプロジェクトに新たな規制が設けられ、ロシアからドイツへとつながるパイプライン「ノード・ストリーム2」が影響を受けることになる。
法案投票前、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、このような制裁は両国関係の基盤に「危険な地雷」を埋めることになるだろうと話していた。
リャブコフ氏は、「こういったこと全てが非常に心配だ。米議会全体を取り巻くロシア恐怖症のヒステリーがなくなっている兆候が見えない」と語った。
下院通過後、ロシアのレオニド・スルツキー下院議員(外交委員会の委員長)はロシアのインタファクス通信に対し、制裁によって「露米関係の修復の見通しは不透明になり、当分の間、関係はさらに難しくなる」と指摘し、「外交的駆け引きの余地」は今や、「極めて」限定的だと話した。
今後はどうなる?
法案が上院を通過すれば、ロシア政府に対してより融和的な姿勢を示してきたトランプ大統領にとっては悩みの種になる。
大統領は法案に対して拒否権を行使するかもしれないが、そうすれば、大統領がロシア政府に対して協力的すぎるとの疑いをさらに強めてしまうだろうと特派員たちは指摘する。
ホワイトハウスのサンダース報道官は24日、「大統領は法案を検討し、最終的な法案がどういったものになるかを見る」と伝えた。
米国はすでにクリミア半島併合をめぐりロシアの個人や企業に対して多くの制裁を科している。昨年12月には、米大統領選をロシアがハッキングしたとの訴えを受けて、バラク・オバマ大統領(当時)がロシア外交官35人を国外退去させ、米国内にあるロシアの外交施設2カ所を閉鎖する措置を取っていた。
トランプ氏の親ロシア姿勢に警戒する米議員たちーーバーバラ・プレット国務省担当特派員
この法案により、ロシアのウクライナ介入をめぐってバラク・オバマ前大統領が科した制裁が法制化され、制裁の解除はより難しくなるだろう。
法案ではまた、ロシア企業との取引、特にエネルギー開発分野での取引に対して規制が拡大される。欧州は、ロシアのパイプラインプロジェクトに協力することで罰せられると非常に心配している。
だがホワイトハウスが懸念しているのは、制裁を免除できる大統領の伝統的な権利を制限する措置だ。今回の措置で、大統領はまず議会に相談しなければならなくなってしまう。そのことと、法案への党派を超えた幅広い支持は、議員たちがいかにトランプ氏のロシアへの融和姿勢を警戒しているかを示している。
可決された法案は、先に上院が圧倒的多数で可決した法案を修正したもので、大統領に送付される前に、上院で再可決される必要がある。
ホワイトハウスは、大統領が法案の草案に多少の変更を加えた後、法案を支持する可能性があると示唆した。ただ、議会には大統領の拒否権を覆すのに十分な票がほぼ確実にあるため、いずれにせよ、大統領が変更を加える余地はほとんど残っていないだろう。