アウンサンスーチー氏、「偽情報」を強く非難 ロヒンギャ危機

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ミャンマーの実質的指導者、アウンサンスーチー氏(今年8月)
ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャが衝突を逃れようと隣国バングラデシュに多数避難している問題で、事実上の指導者のアウンサンスーチー国家顧問兼外相は5日、ロヒンギャが多く暮らす西部ラカイン州に住む全員を政府は守っていると表明した。さらに、ロヒンギャが治安部隊に迫害されているという情報は「偽情報の巨大氷山の一角」だと強く非難した。8月末の危機発生以来、アウンサンスーチー氏が問題に言及しないことに批判の声が上がっていた。
アウンサンスーチー氏の事務所によると、トルコのタイイップ・エルドアン大統領と電話で協議中に発言したという。
地元メディアによると、スーチー氏はエルドアン大統領に対して、ミャンマー政府は「すでにラカイン州のすべての人を可能な限り最善の形で守り始めている」と伝えた。
スーチー氏は「私たちはほかの人たちよりも、人権や民主的な庇護を奪われるのがどういうことか、よく承知している。そのため、国内のすべての人が人権を尊重され、政治的だけでなく社会的、そして人道的に保護される権利も確実に尊重されるようにしている」と述べたという。
スーチー氏はさらに、たくさんの偽の写真が出回っており、「テロリストの利益促進を目的として、異なるコミュニティーの間に問題をたくさん作りだそうと計算された、偽情報の巨大氷山の一角に過ぎない」と反発したという。
しかし、ミャンマー当局によるロヒンギャの扱いについては、批判が相次いでいる。バングラデシュ政府筋2人がロイター通信に語ったところによると、迫害を逃れてバングラデシュに入ろうと大量の難民が国境地帯を移動している最中に、ミャンマーが新たに地雷を国境付近に敷設した可能性があるという。
AFP通信によると、国境地帯で複数の爆発が聞こえており、子供2人と女性1人が負傷した様子と言う。
ミャンマーとバングラデシュの間の国境付近には1990年代に、ミャンマーの軍事政権によって地雷が敷設された。ロイター通信によると、ミャンマー政府は今のところ、地雷を最近新しく設置したかについて回答していないが、スーチー氏の報道官は4日、「テロリストが置いたのではないと、誰が断定できるというのか」と同通信に反論したという。
安全求めてジャングル進む ミャンマー・ロヒンギャ難民
8月25日以降、ラカイン州から12万3000人以上のロヒンギャ難民がバングラデシュに逃れた。
国連は4日、難民の数が一気に急増し、3日から4日にかけて新たに3万5000人がバングラデシュに入ったと明らかにした。
ロヒンギャは国を持たない主にイスラム教徒(ムスリム)の少数民族で、ミャンマーでは迫害を受けている。
今年8月からの衝突は、ロヒンギャ武装勢力が25日に約30カ所の警察施設を襲撃したことをきっかけに始まった。これを受けて、治安部隊が100人以上のロヒンギャを殺害したとされるほか、人権団体ヒューマンライツ・ウォッチは、ロヒンギャの村1カ所で700棟以上の家が焼かれた様子を示すという映像を公表。多くの住民が弾圧を逃れ、北に国境を接するバングラデシュまで徒歩で逃れようとした。
避難した人の多くは、治安部隊は仏教僧が自分たちの村を焼き、一般人を殺して追い出そうとしていると証言している。
これに対してミャンマー軍は、市民を攻撃するロヒンギャ武装勢力と戦っているのだと説明している。
かねてからロヒンギャ保護に消極的とされるノーベル平和賞受賞者のスーチー氏は、今回の危機対応についても強く批判されている。ノーベル平和賞を取り上げるべきだという声もある。
スーチー氏はこれまで、ラカイン州で問題が生じているとは認めながらも、ロヒンギャの民族浄化は行っていないと主張してきた。
同じノーベル平和賞受賞者でパキスタン出身のマララ・ユスフザイさんも3日、アウンサンスーチー氏の発言を「世界とロヒンギャ・ムスリムが待っている」と批判。ミャンマーの人権問題を担当するヤンヒ・リー国連特別報告者は4日、ラカイン州の状況は「本当に深刻」で、ミャンマーの「事実上の指導者」アウンサンスーチー国家顧問兼外相が「対応に乗り出す必要がある」と述べた。